bi[r]th
混線する思考回路
「ねえ、リヴァイはルカが嫌いなの?」
「いや、そんなことはない。
俺はあいつを認めているし、信頼している。
あいつが俺を避けているだけだ。」
気づいてたのか。
こう見えて意外とリヴァイは周りを見てるからなあ。
「ってことは、好きなわけだ?」
「はぁ? ふざけるな。
俺はあんなガキは趣味じゃねえ。
どうやったらそういう発想になるんだよ。」
そう答えたリヴァイは、いつもより少しだけ早口だったりコーヒーをこぼしそうになっていたり、珍しく動揺しているように見えた。
大体、恋愛対象として“好き”なのか、とは聞いていない。
……もしかして、そういう事か。
ちょっと面白そうだな。からかってやりたくなってくる。
「余計な事言ってごめんね〜?
実はうちの班のやつがさ、ルカのこと好きなんだけど何故か兵長が怖いんですって言ってたんだよね、そう、良かったわ、リヴァイに関しては全く心配ないって伝えとくね、うん。
じゃあ、そろそろ失礼するよ、時間取らせてすまなかったね。」
「おい、クソメガネ」と呼び止める声がしたが、聞こえないふりをして部屋を出た。
これは面白い。
人類最強の男が恋をしたなんて。
しかも相手はルカだ。
彼女は人類最強の卵と言っても過言ではないほどの実力の持ち主だ。
面白くなってきたぞ、うん。
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「いや? 私が勝手にそう思ってるだけだよ。
いくら変人でも、自分のことを苦手としている人間はやっぱり苦手でしょ。」
あ、変人って言った。後でリヴァイにチクってやろう。
「うーん、どうかな。
まあ、なんと言ってもリヴァイだからね、それは分からないよ?」
「そっかあ……、うーん、善処するよ。」
それは東洋人流のNOだよね、と心の中でツッコミを入れる。
彼女の中ではリヴァイは苦手な人で決定らしい。
これ以上話しても埒が明かないし明日も早いので、そろそろ切り上げよう。
「じゃあ、明日も朝から会議だからそろそろ失礼するね。
ルカも寝坊しないようにね。」
「ありがとね。やっぱハンジ大好き。
おやすみなさい。」
「おやすみ〜。」
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「おい、クソメガネ。」
ルカが出て行って間も無く、ノックもなしにリヴァイが部屋に押しかけてきた。
部屋を見張っていたかのようなグッドタイミング。
「ちょっ、リヴァイ、こんな時間に乙女の部屋に何の用?
まあ座りなよ、ベッドの上で良ければ。」
「誰が乙女だクソメガネ。
今日の昼言ってたあの話、ちょっと聞かせろ。」
「ああ、新人の班割りの件ね。」
「違ぇ。ルカに告白がどうたらこうたらだよ。」
「うん? リヴァイが人の色恋沙汰に首を突っ込むなんて珍しいね。
なんかあった?」
あまりにもあっさり食い付くもんだから、拍子抜けしてしまった。ちょっとつまんないなあ。
「何もねぇ。
愛だの恋だで動きが乱れたら迷惑この上ねぇだろうが。
大体何で俺があいつの恋路に口出ししなきゃなんねぇ……なっ、」
ギィッとドアの金具が音を立てた時、私は心臓が止まったような気がした。
何でこいつらはこんなにタイミングがいいんだ。