「偵察だ、偵察に行くぞ」
「は?」


跡部が突然なのはほぼいつも通りだが、ここまで唐突なのはあっただろうかと透は考えた。だが跡部はそんな透に、少しも考える時間を与えず、紙袋を取り出した。


「…これ何?」
「青学の制服だ。素材、校章、ボタン…全てにおいて完璧なまでに複製させている」
「うわあ時間とお金の無駄遣い」


紙袋の中からは、透のサイズにぴったりな学ランが現れた。確かに何度か見た事のある制服に似ているが、何もここまでする必要はないだろうに。透はひっそりと溜め息を吐いた。


「ほら何してやがる、さっさと着ねえか!」
「ああもう…わかったよ、付き合えばいいんだろ…」


結局跡部に付き合ってやる自分を内心で褒めながら、透は今着ていた氷帝の制服を脱ぎ始めた。その透を見て、跡部は驚いたのか目を見開く。


「なっ、ば…!」
「何?」
「ぬ、脱ぐな!」
「…はあ?え、なんで?」
「…あっち向いてるから、そしたら着替えやがれ」
「…はいはい」


要するに、跡部は目の前で着替え始めた透に照れたらしい。幼い頃より生活してきているのに何を今更、と透は再度溜め息を吐いた。


「ふう、よし…景吾、着替えたぞ」
「俺様を待たせやがって…行くぜ」
「え、樺地は?」
「あーん?樺地は置いてく、偵察に行くのは俺とお前だけだぜ」
「まじで…」


それはつまり、跡部のストッパーがいないという事であり、面倒が増えるという事である。透はただただ肩を落とすしかなかった。










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