2 じり、じりと透は数歩ずつ後ずさる。だがそれを追うかのように、彼もまたゆっくりと近付く。 「えっと…どちらさま、ですか?」 「青春学園3年の乾貞治だ、よろしく」 「よ、よろしく…」 「お近づきの印にこれはいかがかな?」 ずいっと透の目の前に、3個のジョッキが差し出された。透はそれを1つだけ受け取ると、ちらっと彼の顔を伺った。その顔は逆光で全く伺えず、透は口端をひくつかせた。 「あー…いただき、ます…」 後ろで叫び声が聞こえたような気がしたが、透はこの状況から逃れる為にも、ジョッキの中身を一気に流し込んだ。 「………!!」 透を襲ったのは突然の浮遊感と頭痛、吐き気に目眩、更には腹痛だった。立っている事が出来ない程ふらふらし出した両足。透はそのまま後ろ向きに倒れた。 「ごはあ!!」 そしてそのまま倒れた透に、跡部は慌てて駆け寄った。頬を叩くが反応は無い。跡部は透を横抱きにすると、乾を押し退けて部室のドアを開けた。 「くっ…まさかこんな事になるとはな…覚えてやがれ青学、必ず透の仇は取る…!」 そして跡部は部室を飛び出していった。 「まるで悪役っすね」 「まあ悪いのは乾だけどね」 「ここまで来い、跡部…!」 「なんか部長だけ違うんすけど」 ← → |