4 「ここ」 「ああうん、ありがとう」 それから少しして辿り着いたテニスコートは、思ったよりも広々としているものだった。透は辺りを見回して跡部を探すがどこにもその姿はない。 「…全く、あの馬鹿は…」 「ねえ」 「え、あ、何?」 「見学してくんでしょ?仮入部は?」 「……なんでそうなる?」 「だってアンタ、転校してきたんでしょ?それでテニスコート探してたら入部以外に何かある?」 リョーマはにやっと笑いながら透に問いかけた。その顔が余りにも不敵で、透はどっかの誰かさんと重なり目眩がした。 「あー…違うんだよね、おれここで待ち合わせしてて」 「誰と?」 「…た、田中くん」 言うが早いか、リョーマはがっしりと透の腕を掴むと、テニスコートまで引きずった。 「う、わ!?何すんだ!」 「不審者はっけーん、て事で部長に報告」 その一言で透の顔は青ざめた。なんとか逃げようとするが、どこにそんな力があるんだというくらいリョーマの力は強く、もともと非力な透は為す術なくただひきずられていった。 「ちーっす。部長、不審者が…」 「はーっはっはっは!!」 「あ、おちびぃ!助け」 リョーマが部室のドアを開けた時響いた高らかな笑い声。透にはかなり聞き覚えがあったが、何故か顔を反らしたくなった。リョーマは笑い声の後にこちらに向かってきた自分の先輩を見ると、一瞬でドアを閉めた。 「……」 「えっと…うん、すみません…」 じろり、と下から三白眼で睨み上げられ、透は謝るしか出来なかった。 ← |