「ここ」
「ああうん、ありがとう」


それから少しして辿り着いたテニスコートは、思ったよりも広々としているものだった。透は辺りを見回して跡部を探すがどこにもその姿はない。


「…全く、あの馬鹿は…」
「ねえ」
「え、あ、何?」
「見学してくんでしょ?仮入部は?」
「……なんでそうなる?」
「だってアンタ、転校してきたんでしょ?それでテニスコート探してたら入部以外に何かある?」


リョーマはにやっと笑いながら透に問いかけた。その顔が余りにも不敵で、透はどっかの誰かさんと重なり目眩がした。


「あー…違うんだよね、おれここで待ち合わせしてて」
「誰と?」
「…た、田中くん」


言うが早いか、リョーマはがっしりと透の腕を掴むと、テニスコートまで引きずった。


「う、わ!?何すんだ!」
「不審者はっけーん、て事で部長に報告」


その一言で透の顔は青ざめた。なんとか逃げようとするが、どこにそんな力があるんだというくらいリョーマの力は強く、もともと非力な透は為す術なくただひきずられていった。


「ちーっす。部長、不審者が…」
「はーっはっはっは!!」
「あ、おちびぃ!助け」


リョーマが部室のドアを開けた時響いた高らかな笑い声。透にはかなり聞き覚えがあったが、何故か顔を反らしたくなった。リョーマは笑い声の後にこちらに向かってきた自分の先輩を見ると、一瞬でドアを閉めた。


「……」
「えっと…うん、すみません…」


じろり、と下から三白眼で睨み上げられ、透は謝るしか出来なかった。










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