3 とはいえ、初めて来た場所という事もあって、透はどこに行けばいいのか全くわからなかった。 「んん…まずいな、誰かに聞くか…」 そこで透が目を付けたのが、小柄な男子生徒だった。テニスバックを背負っているし、恐らくテニス部のはずだ。 「あの」 「…何?」 「テニスコート教えて欲しいんだけど」 「なんで知らないわけ」 「えっと…おれ転入生で」 咄嗟についたにしてはまともな嘘だ。だが目の前の男子生徒の透を見る目付きは変わらなかった。なんというか、不審者を見るような目付きである。自分より幾分も低い位置に頭がある少年(恐らく年下)に睨み付けられるのは余りいい気はしない。だが透はにっこりと笑った。 「だから、お願いします」 「…わかった、こっち」 踵を返して歩き出した少年を、透は急いで追いかけた。そして彼の隣を歩く。 「名前は?」 「アンタから教えてよ」 「お前生意気だな…おれは神戸透だよ」 「…神戸透?」 名乗った瞬間、少年がこちらを見上げてきた。なんだろう、何か変な事を言っただろうか。透はそう思った。 「越前リョーマ」 「え?」 「オレの名前」 「ああ…うん、リョーマね。かっこいい名前だな」 それっきり黙り込んだリョーマに、透は首を傾げたがぐんぐん進む彼を見失わない事だけを考えて一緒に歩き出した。 ← → |