2 「さて、青学についたわけだけど」 「テニスコートに行くぞ」 「早っ!あ、こら勝手に動くな馬鹿!」 本人は否定しているが、跡部には方向音痴の気があった。自分の行きたいように進み、行動する為だ。普段なら樺地がいたから問題はなかったが、今はいない為透の心労は増えていく一方だ。 「しょぼいな、青学…」 「勝手に人の学校に来て何言ってんだ」 「こう見ていると哀れになってくるぜ…補正されてない砂利道が足裏に響くな…」 隣でぶつぶつと文句を言いながら歩く跡部を、透はちらりと見て、本日3度目の溜め息を大きく吐いた。 (跡部様は今日も絶好調か…) むしろ不調の時がわからないが、透はその事に気付いてはいない。いやむしろ気付く余裕はなかった。 「ってあれ!?景吾どこいった!?」 ほんの少し目を離しただけで、一瞬で跡部が消えてしまった。好奇心旺盛でハングリー思考の跡部は誰にも止められないのだ。 「あ、携帯…!」 透は急いで携帯を取り出し、跡部にかけるが、コール音が響くばかりで当の本人が出る事はなかった。 「だああああ!携帯の意味無いし!」 氷帝よりも狭い敷地とは言え、透は知らない地で跡部とはぐれてしまったらしい。しかも周りも見知らぬ生徒ばかりだった。 (とにかく…馬鹿に会うにはテニスコートに行くしかないかな…) 気を落ち着かせ、なんとか持ち直した透は、当初の目的であったテニス部偵察の為テニスコートを探す事にした。 ← → |