「さて、青学についたわけだけど」
「テニスコートに行くぞ」
「早っ!あ、こら勝手に動くな馬鹿!」


本人は否定しているが、跡部には方向音痴の気があった。自分の行きたいように進み、行動する為だ。普段なら樺地がいたから問題はなかったが、今はいない為透の心労は増えていく一方だ。


「しょぼいな、青学…」
「勝手に人の学校に来て何言ってんだ」
「こう見ていると哀れになってくるぜ…補正されてない砂利道が足裏に響くな…」


隣でぶつぶつと文句を言いながら歩く跡部を、透はちらりと見て、本日3度目の溜め息を大きく吐いた。


(跡部様は今日も絶好調か…)


むしろ不調の時がわからないが、透はその事に気付いてはいない。いやむしろ気付く余裕はなかった。


「ってあれ!?景吾どこいった!?」


ほんの少し目を離しただけで、一瞬で跡部が消えてしまった。好奇心旺盛でハングリー思考の跡部は誰にも止められないのだ。


「あ、携帯…!」


透は急いで携帯を取り出し、跡部にかけるが、コール音が響くばかりで当の本人が出る事はなかった。


「だああああ!携帯の意味無いし!」


氷帝よりも狭い敷地とは言え、透は知らない地で跡部とはぐれてしまったらしい。しかも周りも見知らぬ生徒ばかりだった。


(とにかく…馬鹿に会うにはテニスコートに行くしかないかな…)


気を落ち着かせ、なんとか持ち直した透は、当初の目的であったテニス部偵察の為テニスコートを探す事にした。










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