これは一体どうした事か。ここはどこだろう、少なくともあたしの部屋じゃない。だってこんなに綺麗じゃないし、なんというか、こんな高級感はない。部屋中がオーラ放ってるみたいな。そしてあたしの隣で寝てるこいつ誰。なんでこんなに鼻高いの?日本人?え、まじで誰。それよりも、何故この人は服を着ていないの。…あ、あたしもか。って、え?え?ちょっと待って落ち着こう!落ち着けあたし!まずは服を着よう、うん。
そう思ったあたしは辺りをきょろきょろと探し、あたしがいるベッドより少し離れたところに昨日あたしが着ていた服が脱ぎ捨てられているのを見つけた。ああチクショウ、本当にヤっちまったのかあたし。服を着るべく、あたしはベッドから出「ん…」ようとしたのだけど、隣の男があたしの手を掴んだ事によりそれは不可能となった。ちょっとちょっと、手を離しましょうよ。あたしは掴まれた手を離そうとしたけれど、がっちり掴まれているらしく、離れる気配が見えない。
一体なんなんだ。昨日はバレンタインだっつうのに彼氏にもフラれ、て…?んん?そう言えば、フラれて、あげるハズだったチョコをむしゃくしゃして近くの公園のごみ箱に投げ捨てて、それで…


「それで君に、僕が声をかけたんだよね」
「うんそうそう…って、」
「おはよう」
「あ、おはよう、ございます…?」


なんだか極自然に会話してしまった。目が覚めたのか、覚めていたのか。随分ぱっちりと目を開けていますねお兄さん。
…そう、あたしはあの時この人に声をかけられて、最初は怪しかったんだけど、話し聞くのも上手いしなんだかすごく自然な流れで居酒屋に入ったんだ。確か。


「気分はどう?」
「えっと、…何も覚えてなくてですね…」
「…ふーん、あれだけの事、したのに?」
「ぎゃああああああ」


待ってあたし本当かよ!フラれたその日に会ったばかりの人と!?しかもイケメン!ぶっちゃけ彼氏よりも相当かっこいいし、視界に入る上半身の筋肉も程好くてあたしの好み、じゃなくて!


「百面相してるところ悪いんだけど、そろそろ隠したら?」
「え、あ、ああああ!!?」


ああもう泣きたい。あたしのお腹から上は、シーツもずり落ちていた為何も隠すものがなかった。知らない男の人に丸出しって…!あたしは急いで腹部のシーツを胸元に手繰りよせた。


「えええっと、あのあなた誰…というかここは…」
「僕はルイジ吉田、愛称はジーノ。よろしくね」
「え、あはい、よろしく…」
「ここは僕の家だよ、昨日君、泥酔しちゃってさあ」
「う、そう言えば頭痛いかも…」
「それで君の家知らないし、僕の家に連れて来たって訳」


何やってんだよあたし…ジーノさん?に迷惑かけて、しかも、全裸って…!


「フフ、昨日の君は可愛かったなあ」
「うわあああ何したんですかあたしいいいい…」
「聞きたい?」
「いや全く!!」
「突然泣いたり、」
「あああやめてええええ!」
「怒ったり、笑ったり、家に連れてきたら突然脱いで寝ちゃうし」
「いやああああ!…って、え?」
「女の子を床でなんか寝せられないし、まあ僕だってソファで寝たくないから一緒にベッドで寝たんだけど」
「は、え、だだだって…ジーノさんも裸…」
「僕は寝る時は脱ぐからね。でも下着ははいてるよ」


見たいのかい?だなんてとてもセクシーにジーノさんは微笑んだ。あたしは精一杯二日酔いで痛む頭を振って否定し、何か間違いがあった訳じゃないんだと胸を撫で下ろした。


「でも本当は、襲っちゃえばよかったかななんて思ってるんだけど」
「!!!」


そんなジーノさんの発言に、あたしはこの大きなベッドぎりぎりまで後ずさった。そんなあたしを見てジーノさんは高らかに笑いながら「冗談だよ」と言った。…その鼻へし折ってやろうか!


「…ま、半分は本気だけどね」
「え?」
「なんでもない」


だけどジーノさんが紳士でよかった。だって一歩間違えば、あたしはかなり危険な状況だった訳だし。改めてあたしはジーノさんに感謝した。


「いや、気にしなくていいよ。」
「でも」
「僕もさ、コロコロ変わる君の表情が気に入ってたし」
「なっ、」
「ほら、そうやってすぐ顔に出るところとか」
「う…」
「それでさ、」
「…はい?」
「僕、余り気が長い方じゃないから端的に言うけど」
「?」
「僕と付き合ってみない?」


なんと、ジーノさんは爆弾どころか核爆弾並の発言を投下なされました。だけど彼の顔は至って真面目で、からかってる訳じゃないって事はわかった。


「えと、その、」
「教えてあげるよ」


あたしが返事に困っていると、ジーノさんはあたしとの距離を詰めて、耳元で「こういう時は、イエス以外は言っちゃ駄目だよ」と言った。その言葉と吐息に、あたしは思わず「…はい」と言ってしまい、口を抑えたけどもう遅かった。


「うん、よくできました」


うわあああ恥ずかしい!ジーノさんはそんなあたしの様子を見て、クスリと笑うとまた耳元で囁いた。


「本当はね、僕の一目惚れだったんだ。」





糖度高めの愛を











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