※携帯擬人化パロ
最近の中学生はだいたい携帯電話を持っている。この前なんか、友達に新機種を自慢されたくらいだ。別に羨ましいなんて思ってない。中学生にもなって携帯がないからなんだって言うんだ。先生に見つかって没収されちゃえ。
「え、今、なんて…」
「だから、あんたもそろそろケータイ欲しい?って」
これは転機だ。未だに携帯を持っていないわたしへの。持っているみんなをひがんだりしたけれど、わたしだって欲しいに決まってる。
わたしはお母さんのその言葉に大きく頷いた。
「………」
「………」
そして後日。わたしはついに念願の携帯電話を手にいれた。…のだが。
「TOKIYAー004です」
「えっと…はあ…なまえです」
「これからよろしくお願いします、ご主人様」
「え…は、はい」
なんか、イメージと違う。
わたしはショップで見た時に、これだ!とインスピレーションが働いた紫色のスマートなモデルの携帯を選んだ。もちろん買った時は電源も入っていないから大人しくて、どんな機種なのかもわからなかったけど…友達のは、もっとこう、明るいのが多かった気がする。これも機種による特色なのだろうか。
「……何か?」
「なんでもないです!えっと…と、トキヤ…さん?」
「どうぞ呼び捨てで、ご主人様」
「ご、ご主人様…」
やっぱり違う!携帯ってもっと身近なアイテムだったはずだ。こんなに固くなくたっていいのに。
「その、わたしの事も名前で呼んでくださ…呼んで欲しい、な」
「ご主人様を、名前で?」
「うん」
「…ではなまえ、最初にプロフィールの入力をお願いします」
「え?えっと…メインメニュー、で0キーを…」
「それから右上のキーを押してください。編集出来ます」
「あ!ほんとだ!」
「メールアドレスは初期設定です、後程お好きなように変更してください」
「うん、ありがとう」
それからトキヤに言われるまま初期設定から自分の好きなように設定を変えていく。その内にだいぶわたしたちは打ち解けていた。
「ふふ、わたしの初携帯がトキヤでよかった」
「…そうですか」
「親切だし、丁寧だし…助かるよ」
「……っ」
わたしがそう言うと、トキヤは俯いてしまった。それから少しだけ上目遣いになって、メールの受信を告げた。
「誰だろう、まだ誰にも教えてないのに…」
「………」
黙ったままのトキヤを操作して、来たばかりのメールを開く。生まれて初めての受信メール、送り主は、TOKIYAー004?これって、トキヤの事じゃなかったか。
私を選んでくださってありがとうございます。
それから、お誕生日おめでとうございます。これからもどうぞよろしくお願いします。
「トキヤ…これ…」
「…プロフィールを拝見したところ、今日がなまえの誕生日という事でしたので」
「…うん、そうなの。トキヤがわたしへのプレゼントなんだよ」
「私で、本当によろしかったのですか…?」
「もちろんだよ!こちらこそ、これからよろしくね」
そう言えば、トキヤは目を細めて微笑んだ。