いやだなあなんて言いながら隣で顔を伏せた先輩を見て、俺はため息を吐いた。


「いやだなあ、手塚先輩に好きな人って…テニスだけやってろ手塚先輩このやろー」
「それ本人に言っておくっス」
「ぎゃああああだめだめ!絶対だめ!」


週に一度の委員会で、俺が先輩に会えるのはこの日だけ。なのに先輩は部長の話ばっかだし全然面白くない。だからちょっとからかってやると、それだけでコロコロと表情を変える先輩はやっぱり可愛い。絶対に口にはしないけど。


「ねえ先輩」
「んー?」
「手塚部長のどこが好きなワケ?」
「えっ!な、い、いやいやいや!」
「教えてよ。協力してあげてるんだからさ」
「確かにそうだけど…でも、恥ずかしい、じゃん…」


部長の話をする時の先輩はいつもの数倍可愛い。多分これが恋する女の顔ってやつなんだろう。
恥ずかしいと言いつつ結局部長の好きなところを喋る先輩を見つめ、俺は痛む心を見ないふりをした。だってそうでもしなきゃやってらんないから。


「それで手塚先輩がその時…って結局わたし喋ってる?!」
「超喋ってましたけど」
「は、恥ずかしいいいい!ってか越前くんも好きな人とかいないの?わたしばっか話聞いてもらってたら悪いから聞くよ!」


そう言って身を乗り出した先輩の目には好奇心が見え隠れしていた。わかりやすすぎて面白い。


「先輩」
「え?」
「だから、俺の好きな人」
「……え、越前く」
「なんてね」
「えっ、え…嘘…?」
「先輩みたいなうるさい人論外だし」
「な!先輩にうるさいとは失礼だぞ!わたしのときめきを返せ!」
「ぷっ、まだまだだね」


俺はこれでいいんだ。適当なところで先輩の近くにいられれば。


「…ほんと、俺もまだまだだね」





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