ふわふわと雪の降る夜。わたしは小さな子供みたいにはしゃいでいた。コートについた雪の結晶がとても綺麗だった。


「そろそろ中に戻るぞ、冷えてきただろう」
「ええ?もうちょっとだけ」
「風邪でも引いたらどうする」
「だーいじょぶだよ」
「…そう言って去年は風邪を引いただろう」


ベランダに出るだけでコートを着せるような真斗くんは、やっぱり心配性だ。自分は部屋着のままのくせに。


「去年は去年、今年は平気!」
「…はあ、ならば雑煮はいらないのだな?」
「えっ」
「せっかく作ったのだが、仕方ない。俺が一人で食べよう」
「あ、わ、わたしも!」
「遊び足りないのではなかったか?」
「ううん、もういいの。真斗くんの作ったお雑煮食べたい」


お雑煮なんて、冷えた体にはちょうどいい。真斗くんは料理上手だから余計に楽しみだ。ほのかに香ってきた美味しそうな匂いに、わたしは思わず笑顔がこぼれた。
そんなわたしを見て真斗くんも笑顔になる。


「さあ戻るぞ」
「うん!」


真斗くんがわたしの手をそっと握った。冷えきったわたしの手よりも、少し温かいくらいの冷たい手は心地よい。


「真斗くんも手、冷えちゃったね」
「なまえ程でもないと思うが…」
「ごめんね、迎えに来てくれた時すぐにいけばよかったね」
「気にしなくていい、最初からなまえが素直に言う事を聞くとは思ってなかったからな」
「何それ!」


優しい声と暖かな瞳とほんのり冷たい手のひら。真斗くんを構成している全てを感じながらわたしは生きている。






遅くなりましたが年越し記念、という事で。
(2012/2/12 黒須)





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