寒い日はストーブに限ると思ってストーブをつけた。その後なんだか無性にアイスが食べたくなって、炬燵で寝ていた妹を置いてコンビニへと向かった。外は雪が降っていて寒くて、一瞬やめようかと思ったけど、なんとなく意地で足を運んだ。
一番安いアイスを自分の分だけ買って、家に帰った。暖かい部屋で冷たいアイスを食べよう。そう思っていたわたしの帰りを迎えてくれたのは、赤く燃える、わたしたちの、家。


「え…?」


消防士の人が必死に消火活動をしていた。近所の人がその様を写真に納めていた。待って、待ってよ。中には、まだ、妹が。
わたしは持っていたコンビニの袋を落とした。そして、家に向かって走り出した。わたしに気付いた消防士の人がわたしを止めようと手を伸ばす。わたしはその手を振り払って家の中に入った。


「げほ…っ」


崩れた家の中は、外よりも激しく赤く燃えていた。妹を探して、わたしは声を張り上げる。黒い煙を吸い込んで苦しい、その内にわたしは、倒れた。


「げほっ、ごほ…!はあっはあ…っ」


ああ死ぬなって思った。と同時に死にたくないと思った。その時、涙で歪んだ視界に白い何かが映った。この赤い場所にはあり得ないであろう白い、何か。それは真っ赤な目を持っていた。それはわたしに言った。


「君の願いを叶えてあげるよ」
「ごほ、…っねが、い…?」
「その代わり、魔法少女になってもらうけどね」
「魔法、少女…」


何の感情も読み取れないその声に、わたしはただ恐怖を覚えた。だけど熱く焼けていくような体の感覚に、わたしはそれに向かって叫んだ。


「生き、たい…!死にたくない…っ」


それからわたしは気を失い、目が覚めた時には病院のベッドの上だった。そしてお母さんから妹の死と家の消失、その原因がストーブだったと伝えられた。
その後は全てが早かった。両親はわたしを残して自殺した。わたしに何も残さずに。何故か火傷くらいの軽傷で済んでいたわたしは早々に病院を追い出された。そんなわたしに頼れる親戚筋はいなかった。


「なんでわたし、生きてんの…」


夕暮れの公園で、わたしはベンチに膝を抱えて座り混んでいた。一人になってしまった。涙が溢れて止まらなかった。


「それは君が生きたいって願ったからさ」
「…!」
「久しぶりだね、元気だったかい?」
「夢じゃ、なかったんだ…」
「夢?夢だったなら君はもう死んでいただろうね」
「あはは…そう、だね…」


ふと聞こえた声に、横を見るとそこには小さな白い何かがいた。あの時の不思議な生き物だ。


「君は生きたいと願った。それは叶ったんだ」
「…そう」
「だから君は魔法少女になった」
「魔法少女?」
「魔女を倒す存在の事さ」
「…わたし、一人、で?」


そう聞くと、その生き物はふるふると首を横に降った。


「一人じゃないわ」


それから直ぐに聞こえた、とても澄んだ女の子の声。ばっと弾かれたように前を向くと、にっこりと微笑んだ女の子がいた。


「私もいるもの、あなたは一人じゃないわ」
「一人じゃ、ない」
「私は巴マミ、魔法少女よ」
「マミ、ちゃん…」


くるくると巻かれた金色の髪が夕日に反射して眩しかった。ゆっくりとこっちに歩いてくる彼女は、美しかった。


「一緒に戦いましょう」
「でも、わたし…」
「大丈夫よ。私が傍にいるわ」


優しい声、美しい微笑み。彼女は女神なのかも知れないと思った。マミちゃんはわたしをそっと抱き締めると、もう大丈夫、と囁いた。一人じゃない。そうだね、あなたがいてくれるんだね。わたしはマミちゃんの背中に手を回して、ぎゅっと抱き締めた。


「…君たちはこれから二人で魔女を倒し、そして魔女になるだろうね。
どっちが先か、楽しみだよ」


(抱き合う少女たちの隣で、インキュベーターは歪んだ笑みを浮かべた)
(少女たちは気付かない、希望の先にある絶望に)






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