※not夢





「トキヤ、ね、ぎゅーってして」
「…何故私がそんな事を」
「なんか寂しくなっちゃってさ、お願い」


私と同じ顔で、そんな情けない顔をして欲しくはない。彼の言うように抱き締めてやるのは、そんな顔を見たくないからだと自分に言い聞かせる。
HAYATOは私の血の繋がった兄で、私は弟。彼がどう望もうと私たちが通じあえる事はない。


「…やっぱり、トキヤは何か違うね」
「どういう意味です？」
「トキヤにぎゅーってされるとさ、凄く幸せな気分になるんだ」


なんでかにゃあ、なんて、こっちが聞きたいくらいなのに。私も同じ気持ちだなんて、あり得るはずがない。


「ねえトキヤ」
「はい」
「トキヤに彼女が出来ても、奥さんが出来ても、ずっと一緒にいたい」
「…そんな事」


当たり前ですとは言えなかった。むしろ私はそのような人を作る気はこれっぽっちもない、何故なら既にその対象がいるからだ。認めたくはないし、言うつもりはないけれど、私はHAYATOを愛している。


「大好き、愛してるよトキヤ」
「わかっていますよ、貴方の気持ちくらい」


だけどきっと私の方が貴方を愛している。どこまでも深く強く、思っている。