なまえは隣で本を読むトキヤの手をじっと見つめた。一定のペースでページを捲るその指と、手を。トキヤはそのなまえの視線に気付いたのか、本を閉じ、なまえに向き直った。
「…なんですか、さっきからジロジロと」
「えっ、あ、綺麗だなあと思って…」
「…は?」
そう言うと、なまえは呆れ顔のトキヤの手をとった。突然の事に、トキヤは内心慌てるが、なまえの手を振り払おうとはしなかった。
「すごく綺麗」
「私の、手が?」
「うん、トキヤくんの手が」
そっと、何か壊れ物を扱うかのように自身の手を握るなまえを、トキヤはいとおしそうに見つめた。そして逆になまえの手をとり、その手の項に唇を落とす。
「君の手の方が、こんなにも綺麗で、美しい」
「ト、トキヤく…っ」
恥ずかしいのか、引こうとしたなまえの手を、トキヤは握る力を強めその指先にも唇を落とした。そのまま舌先で丁寧に舐め上げる。
「ん、ふっ…私の手なんかより、ずっとずっと綺麗です」
「やっ、トキヤくん…!」
トキヤは、なまえの指先から唇を離さずに上目でなまえを見つめた。ちらりと見た彼女の顔は、これまでにないほど赤く染まり、瞳は生理的な涙で潤んでいる。トキヤは自分の心臓がどくん、と音を立てたような気がした。それは恐らく、彼の強固とも言える理性が決壊した音。そのまま、トキヤは思うままになまえをフローリングに押し倒した。
「え…トキヤ、くん…?」
「私を煽ったのは君です、覚悟してくださいね」
トキヤはなまえの唇に自身のそれを落とした。