一ノ瀬トキヤは困っていた。いやむしろ困る困らないという言葉で現状を補えない程の状況である。理由は今自分の上で馬乗りになっている自身の恋人にあった。
数分前、彼女はトキヤを保健室に連れ込むとベッドに彼を放り投げ、ブレザーを脱ぎ捨てた。そのまま訳もわからず目を白黒させているトキヤに跨がり、あろう事か自身のブラウスのボタンを全て外していったのだ。そして今の現状に至る。


「これは何の冗談、ですか」
「冗談じゃないもん」
「ならば何の遊びですか」
「遊びでもない」


前が全開になり、下着と僅かばかりの膨らみが覗く体、更には短いスカートで馬乗りになっている為、派手に捲れて見えてしまう上の物とお揃いの水玉柄のそれ。トキヤは視線をさ迷わせながら、それでもしっかりと告げた。


「私たちはそれでなくとも恋愛禁止令を破っているんです、もし見つかりでもしたら…」
「トキヤはあたしなんかより、アイドルになりたい…?」


トキヤは一瞬言葉に詰まったが、その答えは否だった。だからこそ、トキヤはなまえに向かい合って答える。


「いいえ、しかし今はまだ、そんな無責任な事は出来ません」
「でもっ」
「私たちは、ゆっくりでいいはずです。せめて、卒業してから。」
「…トキヤは、あたしの事、好き…っ?」


なまえのその問いに、トキヤは笑みを浮かべ、起き上がった。傾くなまえの体を抱き締め、彼女の肩に自身の顔を埋めて囁く。


「好きなんて言葉じゃ片付けられないほど、愛しています」


その温かく、愛に溢れた言葉に、なまえは大粒の涙を溢してトキヤの背に両腕を回した。これがなまえとトキヤの、最大限の愛の形だった。




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テーマ「人外ファンタジー」
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