放課後、私は帰ろうとしていた隣の席の男の子に声をかけた。


「いっ、池沢くん!」
「何?」
「その、に、日直…私と…」
「ああ、うん、わかった。じゃあ黒板消してくる」


…私はこのクラスメイトの池沢佳主馬が苦手だ。同じ中学生なのに妙に大人びているとことか、なんか雰囲気がキツいとことか。他の子はそこがいいと言う。よくわからん。やっぱり子供は子供らしく、が一番だ。


「ねえ」
「は、はいぃぃぃっ!?」


考え事をしながら日誌を書いていたところに声をかけられ、思わず奇声をあげてしまった。
池沢くんは軽く目を見張っていた。


「…、黒板消し終わったよ」
「あ、あありがとう…次は日誌なんだけど…」
「どこ?」
「ここの…今日の出来事の欄、それだけだよ」
「わかった」


そして池沢くんは私の隣の席に腰掛け、日誌を書き出した。私はそんな池沢くんを横目でちらりと伺う。…やっぱり大人っぽい。それに、か、かかかっこいい、かも知れない…って今私は何を!?
池沢くんの横顔を盗み見しながらかっこいいとか…私は変態か!と考えていたら横からくすくす、という笑い声が聞こえてきた。


「ぷっ、」
「いいいい池沢くんっ!?」
「ごめん、さっきから見てたらあんたの顔、百面相してて面白かったから…くくっ」
「し、失礼な!」


そこで私はあれ、と思った。池沢くんは今、笑っている。なんだかいつもと雰囲気が全然違うし、どことなく年相応な感じがする。


(え…あれっ?)


なんだろう、笑ってる池沢くんを見てたら心がふわっと暖かくなった。なんでこんな気持ちになるんだろうか。


「…ねえ、あんたさ」
「あ、え、何?」
「……す、っすきなひととか、いるの?」
「え、え」


目の前には真っ赤な池沢くん。なんでだろう、さっきまで心は暖かかったのに、突然熱くなってきた。


「だから!…すきなひと、」
「…さわくん、」
「え?」
「いけ、さわくん」
「!」


多分これが私の初恋だったんだろう。


「僕も、ずっと好きだったよ」




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