今日は俺の久しぶりのオフで、ちょうど同じ日に仕事が休みだった俺の、その…気になってる人と一緒に出掛ける事になりました…!ショッピングをしたり、映画を見たり…これがで、で、デートって言うのかな、なんて恐れ多い事を考えてしまう。隣をにこにこしながら歩くなまえさんはそんな事絶対思ってないんだろうけど…。そんな時、俺たちの前を派手めな格好の女性が通り過ぎた。目立つなあ、うわあ胸元が…なんてその女性を目で少し追っていると、隣を歩くなまえさんが立ち止まった。


「つ、つつつ椿くん…!」
「え、は、はい!なんでしょうか!」
「男の子って、その、やっぱりむむむむ胸のおっきい人が好きなのかな!?」
「え!?い、いいいやそんな事は…!」
「でも椿くんあの人の事見てた、よ、ね…?」
「いっ!?あの、それはその…」


確かにあの派手な、目のやり場に困るような格好はあの人の大きめな胸を強調させてるみたいで、ちょっと目を惹かれ…って違う!


「あの、…た、確かに俺、あの人の事見ちゃってましたけど…」
「や、やっぱり…」
「いやそういう訳じゃなくて!…って言うのもちょっと違うんですけどっ」
「………」


ああああああこんな事を言いたいんじゃないのに!明らかに顔を真っ青にして俯いた彼女を前に、俺は伝えたい事を伝えられない。


「い、いいんだ!気にしないで、ごめんね…なんか変な事言っちゃって…」
「え、」
「行こっ、椿くん!」


そう言ってなまえさんは歩き出した。俺でもわかる、あんな無理した笑顔。俺のせいだ、そう思ったら俺は走り出していた。そんなに離れていなかった距離はすぐに縮まり、俺はなまえさんの腕を掴んだ。


「椿くん…?」
「あの、俺、胸とかそんなの関係ないです」
「…いいんだよ、もう気にしないで」
「聞いてください!俺…確かにあの人の事見てました、でも…」


俺はすうっ、と息を大きく吸い込んで彼女に伝わるように声を出した。


「本当に見てるのは、なまえさんだけッス!」


俺がそう言った瞬間、なまえさんの顔は赤く染まった。


「え、え…!?」
「あ…お、俺…!」


言った、言ってしまった。いつかは言うつもりだったけど、まさか今になるなんて。俺は今、顔に身体中の血液がまわってるんじゃないかというくらい真っ赤に染まった頬を隠すように大きく手を降った。


「違っ、いやなまえさんを見てたのは違くないんスけど!」
「椿くん、それって…」
「す、すすすすんません!失礼しましたあ!!」


そして俺は走り出してしまった。つまり言い逃げという事をしてしまったのだ。…き、嫌われたに決まってる!逃げた俺はその時、なまえさんがどんな顔をしていたのかを知らなかった。




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