フレンとユーリとそっくりさん
ファーストネームは世界樹から生まれた為、無知である。本だけで手に入れた片寄った知識や、間違った事を教える駄目な大人(主にゼロス)のせいであり得ない事を言ったりもする。だからこそ、正しい事を教える人物が必要なのだとフレンは考えていた。
「ファーストネーム、何してるんだい?」
「あ、フレン」
「これは…ユーリ?」
フレンはファーストネームが描いていた画用紙に目を向けた。そこにはお世辞にも上手とは言えないが、ユーリらしき人物が描かれていた。更に他の紙には自分のような絵や、このギルドのメンバーの姿もあった。
「これは…」
「みんなだよ」
「うん、よく描けてるね」
「わたしの好きな人。」
「え、」
そう言われ、フレンは顔を赤くした。自分だけに言われたわけではないのをちゃんと理解してはいても、それでも女性に余り免疫のないフレンが照れるのも無理はなかった。
「フレンどうしたの、熱があるみたい」
「あ、いやなんでもないんだ!」
「ほんと?」
「うん、本当だよ」
そう言ってからフレンは自分らしき人物の絵を取った。
「これ、僕にくれないかな?」
「え、でもそれは、」
「駄目かい?」
「ううん、駄目じゃ、ないんだけど…」
ファーストネームはそう言うと、視線を泳がせた。フレンはそんな様子のファーストネームを照れていると思ったのか、彼女の頭を撫でるとこれから用があるから、と部屋を立ち去った。1人取り残されたファーストネームは、フレンが出ていった扉を見つめ、皆が1人1人描かれた紙の中から一枚だけ抜き取った。
「お、ファーストネーム。何してんだ?」
「ユーリ、」
「ん?なんだこりゃ」
「みんなだよ」
「あー…そうかじゃあこれは俺だな」
新たに部屋に入って来たユーリはファーストネームの手元の絵を見て真っ黒な人間が描かれた紙を取った。それからファーストネームの手元の絵を見る。
「お、そりゃあ、……フレンか?」
「うん、そうなんだけど…」
「渡してやったら喜ぶぜ?」
「…フレン、間違えたの」
「?」
「さっき、間違えてガイの絵を持ってっちゃった」
「まじかよ…」
「どうしよう」
「まあ、あれだな、もう少し頑張っか」
「……うん」
その頃フレンは、一緒にクエストに出ていたガイにファーストネームからもらった絵を見せていたという。