暇人ルークとおりがみ
「あー…暇だな…」
自室のソファで寛ぎながら、ルークはそう呟いた。いつも彼の側にいるガイは今はクエストに出ているため不在、特に自分は何もする事も無いので部屋でぼーっとしていたのだが、元々ただ待っている事や何もしないでいることが嫌いなルークの我慢はもうすぐ限界だった。そんな時、部屋のドアが控え目にノックされ、1人の少女が入って来た。
「ティア、さっきすずに、」
「おっ、いいトコに来たなファーストネーム!」
「ルーク?ティアはいない?」
「あん?いねーよ、ガイたちとクエスト行きやがった」
俺を置いて、とルークは最後に呟いた。だがティアはルークにも声を掛けてはいた。ただ当の本人は寝惚けていて、自分の眠りを妨げたティアの言う事は全て聞き流していたのだ。
「そっか、じゃあ…」
「ちょっと待てよ、俺今暇してたんだよ」
「暇?」
「ん、だから何かしよーぜ」
「あ、じゃあこれ、」
「、んだこれ」
ファーストネームは手に持っていた色のついた正方形の紙束をルークに差し出した。ルークは見たこともないと言う様に、しげしげとそれを見つめる。
「さっきすずに教えてもらったの、折り紙って言うんだって」
「へェ…んでそれをどーすんだ?」
そう言われたファーストネームは、その場にしゃがみ込んで紙を折り始めた。
「…で、こうして、」
はい完成、とファーストネームはなんとも不恰好な形になった紙を掲げた。
「…一応聞いてやっけど、それ何だよ?」
「いぬ」
「……貸せ、俺もやる」
ルークは犬と呼ばれた紙を見るが、どう見てもそれは犬には見えなかった。どちらかというと豚のように見える。折り方は見ていたからなんとか出来るはずだ、とルークはファーストネームから紙を受け取り自分も折り始めた。
「…んで、ここを…」
「ルーク違う、そこは」
「うっせーんだよ!黙って見てろ!」
「む、」
「っち、…んだよこれめんどいな…」
ルークはぶつぶつと文句を言いつつ、ただひたすらに手を動かしていた。そんな彼を横目で伺ったファーストネームは、自分よりも若干手付きがいいルークを見て勝手に対抗心を燃やした。
「…っと、ほら完成!」
「…」
「どーだこれ、犬だろ、こっちより」
「そんな事ない、むしろ牛」
「んだと!?誰の犬見て牛っつってんだ!?」
「ルーク」
「言葉補えよ、俺は牛じゃねー!」
「でも牛だよ、角生えてる」
「じゃあお前は豚だ、鼻潰れてるしな!」
「違う、犬」
「俺のだって犬だっつの!」
ルークはファーストネームの犬を、ファーストネームはルークの犬を持ち、お互いに文句を言っていた。そして2人はしばらく睨み合うと、同時におりがみに手を伸ばし、また折り始める。
「はん、俺のが上手く出来るって事を教えてやるぜ」
「…負けない」
黙々と、ただひたすらに2人は折り続け、自分の満足がいくまで作り続けた。
***
「ただいま、ルーク…って、寝てる?しかもファーストネームまで…、それに何これ…」
「うわ、部屋中紙だらけじゃないか」
「かっかわいい…!豚に、牛に…何かしらこれ…」
「いや…これ犬なんじゃないか?」
「これもらってもいいかしら…」
「いいんじゃないか?…しかし2人共仲良く寝てるなあ」
「ええほんと。」
「しばらくこうしとこうか」