※捏造





「おはやっほーニュース?」
「うん、千早ちゃんの新しいレギュラー番組よー」
「新番組かあ…主演は、HAYATO、くん?」
「そう!最近勢いのある新人さんなの」


とあるクイズ番組の収録が終了し、タクシーに乗り込むと同時にマネージャーの津笠さんが企画書を渡してきた。そこに書かれていたのは新番組で、メインはHAYATOという新人さんらしい。わたしはアシスタントを勤めるとか。


「とにかく、お話だけでも聞いてみない?」
「うーん…うん、はい、そうします」


悪い話じゃあないし、うん、話を聞くのは別にいいだろう。本当に嫌な仕事なら断れるだろうし。そう思ってわたしは返事をし、打ち合わせは2日後に決まった。



***


それから2日後、わたしと津笠さんはテレビ局に来ていた。HAYATOくん、どんな人なんだろう。基本的にわたしはあんまりテレビを見ないから、未だ会った事のない新人である彼を把握しきれずにいた。


「うー…緊張してきたあ…」
「千早ちゃん、いつもの打ち合わせじゃない」
「わたしにはちょっと違うんですよう…あ、まだ時間ありますよね?」
「そうね…早く来すぎたかもしれないわ」
「じゃあ飲み物買ってきます!」
「え、千早ちゃ…」


わたしは津笠さんの話を聞かず、財布を掴んで打ち合わせ室から飛び出していた。わたしという人間は、緊張するとどうしても体を動かしていたいのだ。


「…あ、インスタントコーヒーあったのに…」


今思えば、あの部屋にはポットと紙コップ、それからインスタントコーヒーが置かれていたのだから、わざわざ飲み物なんて買う必要がなかったのだ。思い立ったら即行動、周りなんて見ないわたしだから忘れていたんだろう。…うわあ恥ずかしい!わたしは勢いよく廊下の角を曲がった。その先には自動販売機があるのだ。けど。わたしの体はそこで何かにぶつかり、後ろ向きに傾いた。あ、倒れ、ちゃう。


「な、…危ない!」


だけどそれはほんの一瞬だった。多分わたしがぶつかったであろう人が、わたしの手を咄嗟に掴んで引き寄せたのだ。おかげでわたしは倒れる事はなかった。


「危ないでしょう、廊下の角を曲がる際はもっと気をつけて…っ!?」
「ご、ごめんなさ…」


その時、ばちっと初めて彼と目が合った。う、わあ…すごくかっこいいなあ、オーラがあるっていうか…。でも見た事のない人だ。


「…いえ、こちらも不注意でしたので。では失礼します」
「え、あ、はい…」


それからその人はわたしから目を反らすと、明後日の方向を見ながら早口に言うと足早に去っていった。助けてくれたのにお礼言えなかったなあ、また会えるといいんだけど…。わたしは彼の後ろ姿を見送ると、すぐ側にあった自動販売機まで小走りで近付いた。



***


「ただいま、津笠さ…!」
「あ、お帰りなさい。こっち、早く早く」


わたしが2つの缶をも持って帰ると、そこには津笠さんと、プロデューサーさん、それからさっきの人がいた。


「あ!さっきのぶつかっちゃった人!」
「あらHAYATOくん、千早ちゃんに会ってたの?」
「えー?人違いだと思いますよ」
「え?あれ、人違い?」


そうだろうか。確かに纏ってる雰囲気とか、喋り方とか、さっきの人とは違うような、気もする、けど。容姿とかオーラとか、そういうのは同じ、なんだけど…。

「千早ちゃん、こちらHAYATOくんよ」
「HAYATOでっす!よろしくね、千早ちゃん」
「えっと、九条千早です。よろしくお願いします!」
「―…じゃあ今回の新番組についてだけど、」


それから、プロデューサーさんが詳しく番組について教えてくれたけど、わたしは目の前のHAYATOくんを見ていた。うーん…さっきのHAYATOくんは、本当に違う人、なんだろうか。なんだかこのHAYATOくんは何かが違う気がする。わたしの視線に気付いたのか、HAYATOくんはわたしと目を合わせるとにっこりと笑った。








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