わたしには友達が羨ましがるくらいかっこいいお兄ちゃんがいます。二人は双子なのでとてもそっくりです。でも性格は全然違います。ハヤトお兄ちゃんは明るくて元気で、時間にもルーズ。トキヤお兄ちゃんは真面目でクールでしっかり者。見た目以外は正反対な二人ですが、よくよく見ると似てるところが多くあったりします。


「千早、起きなさい。朝ですよ」
「う…はあい…おはよう、トキヤお兄ちゃん…」
「おはようございます。朝食の準備は出来てますから、先に下に降りていてください」
「お兄ちゃんは?」
「…私はあの馬鹿を起こしてからいきます」


そういうと既に制服姿のトキヤお兄ちゃんは溜め息を吐きながらわたしの部屋から出ていった。
両親が海外へ出張に行っている我が一ノ瀬家では、お母さんの仕事はトキヤお兄ちゃんがやってくれています。朝ご飯にお弁当、夜ご飯や掃除洗濯まで。それでいて高校では生徒会長もやっているからお兄ちゃんは本当に凄いです。
わたしはパジャマのまま部屋を出て、リビングのある一階に向かいます。階段の途中で中々起きなさいハヤトお兄ちゃんにトキヤお兄ちゃんが怒鳴った声が聞こえました。ハヤトお兄ちゃんはやっぱり時間にルーズです。
でもハヤトお兄ちゃんも高校では色々な運動部にスケットとして参加したり、アルバイトをしたりと忙しい日々を送っています。だからトキヤお兄ちゃんはハヤトお兄ちゃんを一番最後に起こすのでしょうか。


「ふあああ…おはよう千早…」
「おはよう、ハヤトお兄ちゃん」
「ハヤト、しっかりしなさい。口元に涎がついてますよ」
「え?どこどこ?」
「ここだよ、お兄ちゃん」
「んー」
「はあ、これではどちらが先に産まれたのかわかりませんね」


まだ寝惚けてるのか、見当違いの場所を拭いているお兄ちゃんの口元をわたしが拭ってあげると、トキヤお兄ちゃんはそう言いました。


「千早、ありがとねっ」
「どういたしまして」
「二人共、お弁当はここに置いておきますから忘れないでくださいね」
「はーい」
「わかってるよ、トキヤってば心配症だよね。ねっ千早」
「えっ…そうでもないと、思う、けど」
「……全く。いいんですか?ハヤト、今日はサッカー部の朝練に顔出しする予定では?」
「え?あ、あっ今何時!?」
「えっと…七時半過ぎたところ…」
「おや、もうとっくに始まってますね」


トキヤお兄ちゃんはコーヒーを飲みながらそう言いました。わたしとトキヤお兄ちゃんはまだ余裕がありますが、ハヤトお兄ちゃんには全くないらしく、朝が弱いお兄ちゃんにしては珍しく慌てて朝ご飯を食べ始めました。


「なんれ起こしふえくれにゃかっふぁの!」
「起こしましたよ、千早の前に」
「んぐっ…」
「ハ、ハヤトお兄ちゃん…!」
「げほ、あ、ありがとう千早…っ」
「がっつくからですよ、そもそも早起きすれば間に合ったものをいつも貴方は…」
「待ってトキヤ話は後!制服制服!」
「そこにあります」
「ありがとっ!あれっ、か、鞄は!?」
「ソファの上です」
「流石トキヤっ」


トキヤお兄ちゃんがしっかりとアイロンをかけてくれた制服が、物干し竿に二人分吊るしてありました。ハヤトお兄ちゃんは急いでパジャマを脱いで制服に着替え、トキヤお兄ちゃんが準備しておいてくれた鞄を持ちました。


「いってきま…あ、忘れてた!千早っ」


わたしたちの間には昔からあるお約束があります。それは出かける前にぎゅうっと抱き合う事。どんなに急いでいる時でも、いくつになっても変わらない約束事です。
わたしは両手を広げるハヤトお兄ちゃんに向かってぎゅうっと抱き付きました。


「はい、いってらっしゃい、お兄ちゃん」
「うん、いってきまあす!」
「いってらっしゃい、くれぐれも怪我はしないでくださいね」
「わかってるよ、じゃあトキヤも後でね!」


そう言って家を飛び出したハヤトお兄ちゃんは自転車に乗り、急いで学校へと向かいました。そんなお兄ちゃんを見送り、リビングに戻ると、そこにはお弁当が仲良く三つ。ハヤトお兄ちゃんの忘れ物でした。


「あんの馬鹿は…!」
「あはは…あれ、そういえばお兄ちゃん」
「…なんです?」
「昨日ハヤトお兄ちゃん、自転車修理に出してなかったっけ」


わたしがそう言った瞬間、トキヤお兄ちゃんは固まりました。
お兄ちゃんたちの通う高校は自宅から少し離れていて、二人はいつも自転車で通学しています。でも昨日、ハヤトお兄ちゃんは自分の自転車をパンクさせ、修理に出した筈でした。しかし今日の朝ハヤトお兄ちゃんは自転車に乗っていきました。よくよく思い出せば、あの黒っぽい青色をした自転車は、トキヤお兄ちゃんのものです。


「あの男は…!!」


トキヤお兄ちゃんは、近所にバス停がないため、学校まで歩かなくてはいけません。今の時間は八時数分前。ぎりぎり走って間に合うか、というところでしょうか。


「千早、すみませんが戸締まりは頼みました!」
「うん、いってらっしゃい」


ほんの数分で身支度をすませたお兄ちゃんは、慌てて家を飛び出していきました。わたしは苦笑しながらその姿を見送ると、リビングに戻ります。わたしの中学校は自宅からは近いので、まだまだ時間に余裕はあります。二人が置いていった朝ご飯のお皿を片付け、わたしはソファに腰掛けました。


「…あれ?」


リビングに置いてあるお弁当は、何故か三つありました。トキヤお兄ちゃんは慌てて、二人分を持ち忘れたようです。


「た、大変!」


ハヤトお兄ちゃんは今月金欠だと言っていたからきっと学食や購買には行けません。トキヤお兄ちゃんは無駄遣いを嫌う人だからお昼を抜いてしまうかも知れません。
わたしは急いで制服に着替えると、二人のお弁当を持って家を飛び出しました。今ならまだトキヤお兄ちゃんに追い付くかも知れません。


「はあっはあっ…!」


急いでお兄ちゃんを追いかけたわたしは気付きませんでした。わたしが持ってきたお弁当は二人分だという事に。
そして中々トキヤお兄ちゃんに追い付けず、結局わたしは学校にも遅刻し、お弁当も忘れてしまうのでした。






トキヤとHAYATOが兄弟ネタ。妹ちゃん目線でお送りしました。結局は三人共お馬鹿さんって事とおかんトキヤが書きたいだけの産物に(笑)
やっぱりHAYATOがハヤト表記は慣れませんね、変換間違えそうになりました。ここから双子はスカウトされてアイドルになったりしちゃったりするのかも





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