今どこにいるんですか。暗くなった空を部屋のベランダから見上げ、僕は彼女の姿を思い浮かべた。どうしても友達と出掛けたいから、と頼み込まれたから渋々許可したけれど、その判断は今では後悔してもしたりません。
もしかしたら何かあったのかもしれないなんて、考えたくもない不安に襲われる。
「なまえちゃん…」
いつもみたいにぎゅうって抱き締めたままにしておけばよかった。何分おきでも電話したってよかった。今どこにいるの。僕を一人にしないでください。僕は君がいなければ生きてはいけないんです。
「た、ただいま…!ごめんなさい、遅くなって…」
「なまえちゃん!ああ…よかった…もしこのまま帰って来なかったら、って不安で…」
「ごめんなさい、久しぶりに会った友達で、その…長引いちゃって…」
「いいんです、ちゃんと帰って来てくれましたから。」
寂しかったんですと、僕は未だコートすら脱いでいないなまえちゃんを目一杯抱き締めた。
「な、那月くん」
「やっぱり嫌だよ、ずっと一緒にいましょう。出掛ける時だって一緒がいいです…」
ぎゅうぎゅうと抱き締める力を強める。なまえちゃんの甘い香りが鼻をかすめて、それが酷く心地良い。それだけで僕の中が満たされていくみたいで。
「今度は時間を決めましょう。それに心配だから僕も着いて行きます」
「え…そ、そんなの駄目だよ」
「心配なんです。…好き、だから」
僕がそう言うと、なまえちゃんはそっと僕の背に手を回した。
こうやって抱き締めあって、いつか二人融け合ってしまえればいいのに。そうすれば、君の全ては僕のものです。素敵でしょう?