朝起きたら、イケメン(死語)になってました。というかトキヤじゃん…なんて、驚きながら顔を触ってみるけれど、その鼻筋や唇など、わたしとは全く違う顔のパーツにやはりトキヤだと実感させられる。試しに喋れば、声もトキヤそのもの。
これは一体どういう事だろうか。というかここはトキヤと音也の部屋で、わたしが昨日寝たのはちゃんと自分の部屋だ。
訳がわからない、しかも何故こんなに朝早く目覚めたんだわたし。4時にもなってないけど。
「…うん、夢かな、そうだよあり得ないもんね」
ぼふっとわたしはベッドに舞い戻った。夢だ夢、そう考えながらわたしは瞼を降ろす。きっと起きたらわたしはわたしだもん、絶対。
「……さい、」
「…あ?うっさ…」
「…っ起きなさい!」
「〜うるさいって…言って…」
誰だ人の眠りを妨げる奴は。と、起きてみたらそこにいたのは…わたし…?え、ちょっと待ちなさいわたし?
「な…んで、わたしが…!」
「それはこちらの科白です、まさかとは思いましたが…」
「え…なんかわたし綺麗?」
目の前に立っているのは確かにわたしだ。だけどなんだか…うん、立ち居振舞いがモデルみたい。猫背になってないし。
「一応聞きますが、そうして私の顔で阿呆面しているのはなまえですか」
「あ、あほとはなんだ!」
「これは本当に困りましたね…」
「…え、まさか、トキヤ…だったり?」
「ええ、まあ不本意ながら」
「えええええ!!」
夢じゃなかった、のか。うわあああり得ない!わたしの顔でとても不機嫌オーラ丸出しのトキヤは、クローゼットから服を出してわたしに突き出した。
「着替えてください」
「あ、うん。…って、トキヤも着替えたんだ」
「………ええ」
「でもわたしパジャマで寝たような…」
「………早く着替えてください」
「う、うん」
赤らんだ顔でトキヤはわたしから目を背けた。ああ…うん、見たんだ。いいよわたしもじっくり見るから。
「うわあ…トキヤ腹筋ぱねえ」
「な…、やめなさい!」
「肌白っ」
「っ、なまえ!!!」
「あ、馬鹿、音也が…」
「んー…トキヤ…?」
こりゃあ大変だ。目を覚ました音也は、なんというかあり得ない物を見たという目をしている。そりゃ上半身裸のトキヤがセクシーポーズして、それをわたしが抑えつける様子って何も言えないよねえ。
「二人共…なにしてんの…」
「えっとお…イイコト?」
「馬鹿ですか君は!」
「え、え?」
「しまった…今わたしたちは俺がアイツでアイツが俺で状態だった…!」
「黙りなさい行きますよ!」
わたしはトキヤに引かれ、服を抱えたまま上半身裸の状態で部屋を飛び出した。音也は放心状態で放置だけど良かったんだろうか。
prev /
next