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「トキヤってさ、なまえには厳しいよね」
「そんな事はありません、あったとしてもそれは音也には関係のない事です」
「でもさあこの前なまえ、泣いてたよ?」
「………」
「いくら幼なじみでパートナーで仲良くてもさ、あれじゃなまえが可哀想じゃん」
音也にそう言われ、私は思わず黙ってしまった。確かに私はなまえには厳しいかもしれない。しかしそれは共に卒業し、デビューを果たすための仕方ない事。けれど音也の言う事も間違いではない。実際、私はなまえが私の見えない所で泣いていたなんて知らなかった。それを音也が知っていた事も。
「えっとなんて言うんだっけ…確か…あれと牛?」
「…はあ、飴と鞭ですか」
「そうそう!アメとムチ!トキヤはムチばっかでアメがないんだよ」
余計なお世話ですとは言えなかった。飴と鞭。何かを成長させるのに鞭ばかりでは逃げ出してしまう。逆に飴ばかりでは成長は有り得ない。しかし飴とは…
「例えばさ、HAYATOって優しそうだよね!」
「HAYATOですか?」
「うん、なんか甘やかしてくれそう」
「………確かに、なまえもHAYATOに好意を持っていましたね」
「え?」
「こちらの話です」
以前、曲の制作の途中でなまえを怒鳴った時、HAYATOがいい、と言っていたような気がする。
…HAYATOのキャラクターは私とは違うし、演じわければ適度な飴と鞭になるのではないか。
「わかりました、飴と鞭」
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