リクエスト小説 | ナノ







とりあえず物陰に押し込まれたわたしは、トキヤの監視の元、服を着るに至った。トキヤが入ってなんだかクールになったわたしは溜め息を吐いて歩き出す。


「え、ちょっ…どこ行くの!」
「早乙女さんの所です、こんな事、あの人以外に考えられません」
「ああうん…確かに…」
「それからなまえ」
「うん?」


トキヤはぴたりと立ち止まると、振り返ってわたしを睨んだ。なんだろう、いつもと違って怖くない。わたしの顔だからか。


「私の姿で馬鹿みたいな真似は止めてください」
「はあ?じゃあトキヤもわたしの顔でそういうむくれっ面すんの止めてよね」
「…善処します」
「ならわたしだってトキヤになりきってみせるよ」
「不安要素しかありませんが」
「心配いらないって!」


学園長室の前に来るまで、知り合いに会う事はなかった。軽くドアをノックすると、中からは「入ってマース」の声が。わたしとトキヤは目を合わせ、中へ入った。


「失礼します」
「失礼しまーす」
「お二人を待ってマシタ」
「…ならばこの現象は早乙女さん、貴方のせいで間違いありませんね?」
「イエース!」
「何のつもりですか、わたしたち迷惑してるんですけど!」
「それは…」
「「それは?」」


学園長は一呼吸置いてから右の手のひらに握った左手をポンっと乗せて言った。


「アイドル志望のお二人に臨機応変に対応する事と異性に成りきるすべを憶えて欲しかったからデース!ミーからの特別授業ネ」
「嘘臭あ!今めちゃくちゃ"いい事思いついた!"みたいな顔してたじゃないですか!」
「全く…ようは私たちは早乙女さんの気まぐれに巻き込まれた、と」


なんて事だ、というかなんて人なんだ。わたしたちの軽蔑にも似た視線を感じたのか、学園長はわたしたちをこの部屋から追い出して扉を閉めた。


「一日経てば戻りマス、今日の学校は頑張ってくだサーイ!」
「えええええ」


扉越しに聞こえた学園長の声にわたしたちは呆然とした。とにかく今日一日は周りにばれないように過ごし、乗り切らなければならないという事になってしまったらしい。ああ隣のトキヤが怖いんですけど!







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