リクエスト小説 | ナノ

林檎さまへ!






胸がもやもや、する。苦しくて、辛い気持ちがわたしの体を支配していく。そっと視線を向ければ、楽しそうに談笑するハルちゃんと、一ノ瀬くん。
クラスは違うけれど大切な友達のハルちゃん、それからわたしが密かに思いを寄せるパートナーの一ノ瀬くん。二人が仲良くしている事はとても微笑ましいはず、だけどわたしはその光景に胸を痛めていた。
わたしじゃ一ノ瀬くんには相応しくないのか、ハルちゃんなら、一ノ瀬くんの最高のパートナーになれるんじゃないか。なんて、ひねた感情がぐるぐるとわたしの中で巡った。


「みょうじ君、どうかしましたか?」
「え、あ、一ノ瀬くん…!」


良くない考えに頭を悩ませていると、目の前に一ノ瀬くんが現れた。その顔は先程の優しげな表情とはうって変わって、とても億劫そうに見える。


「…あの、一ノ瀬くん」
「はい」
「わたしがパートナーで、その…よかった…?」
「…それはどういう意味です?」
「わ、わたしってなんでSクラスなんだろってくらい才能、無いし…一ノ瀬くん、ハルちゃんと一緒にいる方が、楽しそうだし…だから…」
「はあ、そんな事で悩んでいたんですか」
「なんで悩んでるって…」
「顔を見ればわかります」


そう言うと一ノ瀬くんはわたしの頬に手を伸ばした。その指先は目の下、そして唇を撫でる。わたしは突然の事に硬直した。


「目の下には隈、唇は荒れています」
「あ、は、恥ずかし…っ」
「動かないで、このままで聞いてください」


わたしが逃げようとした時、一ノ瀬くんがしっかりとわたしの両腕を掴んだ。どくん、と心臓が高鳴る。


「君は自分を卑下し過ぎです。もっと自分に自信を持ってください」
「そ、んなの…」
「私はみょうじ君がパートナーで良かったと思っています、同時に、君の作る曲を歌えるのも私だけです」
「一ノ瀬くん…」
「確かに七海君にも才能があるでしょう、しかし私が惹かれたのは君の曲です」


一ノ瀬くんは一度も視線を反らす事なく、わたしにそう告げた。ああ、胸のどきどきが止まらない。


「それに…君といる事も新鮮で、楽しいですよ」


その一言でわたしの顔は馬鹿みたいに赤く染まった。掴まれた腕が熱い。
一ノ瀬くんは、歌だけじゃなく、わたしをどきどきさせる天才でもあるんだろう。








リクエストに沿えていたか不安でなりません…!多分二人はまだ本編で言うところの7月辺りなのかと←
リクエストありがとうございました!





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