リクエスト小説 | ナノ


 


あの日からわたしの私物はよく消えるようになった。多分、あの女子たちの仕業だろう。最近はわたしもただ黙ってやられているばかりにもいかないので、貴重品は常に持ち歩きその他はロッカーにしまう事にしていた。もちろん鍵をかけることも忘れない。
古典的だが机に落書きをされていたり、椅子が無くなっていたりもする。けれど図太いわたしはそれを彼女たちの机や椅子と交換し、我が物顔で使ってやるのだ。ざまあみろ。


「君も意外と過激だね。そんな可愛らしい顔をして」
「話かけないでください」
「やり返したりしないのかい、腹が立ったりとかは?」
「話かけないでください」
「…強情なレディだ。でもそんな君も嫌いじゃない」
「話かけるなっつってんだろ」


そして神宮寺レンもわたしにちょっかいを出すようになっていた。席につき、本を読むわたしの隣の席に腰掛けた神宮寺はにこにこしながらわたしに話かける。最近の休み時間はいつもこうだ。静かに本も読めない。


「今日は何の本を読んでるの?昨日は心理学、一昨日は料理本だったかな」
「なんで覚えてるんですか気持ち悪い」
「基本だよ、レディの興味のある物は俺も興味がある」
「ああそうですか気持ち悪い」
「ふうん、今日はミステリー物ね。面白い?」
「あなたが話かけてこなければもっと楽しめるでしょうね気持ち悪い」


わたしがそう言うと、神宮寺は面白そうにくすくすと笑った。その表情は馬鹿にされているみたいで、むかついて仕方がない。


「レディはいつになったら俺を見てくれるのかな」
「一生ありません」
「あ、気持ち悪いがとれたね」
「…本当に気持ち悪いですね」
「俺にそんな事を言うのは君だけだよ」
「でしょうね」


ああその余裕そうな顔も腹立たしい。からかわれているとわかってるから、余計に。完璧に無視できないわたしにも、腹が立つ。


「ねえ」
「……なんですか」
「俺がもし、」


神宮寺の言葉を遮るように、休み時間の終わりを告げるチャイムが鳴った。さあ早く席に戻れ神宮寺。


「ああ、もう休み時間も終わりか」
「早く戻ってください」
「ちょっとだけ待って、これだけは言わせて欲しいんだ」
「…短めにお願いします」
「ありがとう、レディ」


そう言って笑った神宮寺は、席を離れわたしの前に立った。なんだか見下されているみたいで嫌だ。そう言おうと、神宮寺を見上げた時、ふとわたしの顔に影が落ちた。その瞬間に響く、クラス中の女子の悲鳴。悲鳴。悲鳴。


「俺がもし、レディを、なまえの事を本気になったって言ったら信じてくれるかい?」
「……………は?」


神宮寺はそう言うと、わたしの額に唇を落とした。途端に周りから湧き上がる絶叫。絶叫。絶叫。


「なに、言って…」
「じゃあまた後で」


クラスに入って来た先生を一瞥して、神宮寺は自分の席へと戻っていった。
わたしは徐々に額から顔、更には体まで熱くなっていくのを感じた。ああどうして。今のわたしには学園の校則も、クラスの女子の事も何も考えられなかった。けれどたった一つだけ、わたしの脳内を占めたのは、女たらしの色男。
違う、違う、これじゃあ、わたしが神宮寺を好きみたいじゃないか。
ただ一つ言えるのは、神宮寺に名前を呼ばれて跳ね上がった心臓に嘘はなかった事、だけ。






空色さまリクエスト、神宮寺さんで甘々でした。甘々…?あるえ、なんか違う、よう、な←
この神宮寺さんちょっとマゾっぽいですn
リクエストありがとうございました!


 


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