リクエスト小説 | ナノ


 


「悪い、俺にも拒否権あるから」


中学二年の冬、わたしはこっぴどい振られ方をした。わたしが告白をした男は、そう告げた後更に笑ってこう言った。


「俺の好みってさ、ほら、三組の相川みたいな可愛い子なんだよね。確か相川って早乙女学園志望だっけ?
まああれだけ可愛かったらなあ…ま、そういう訳だからみょうじはないわ」


お前デブスだし、と付け加えたあの男に殺意が沸いたのは言うまでもない。確かにわたしは太ってるし可愛くもない。自覚済みだ。だけど人並みに恋もする。だいたいお前人の事言えるのか。言えないだろ。むかつく。絶対に見返してやる。
その時、わたしは泣きながら固くそう誓ったのだ。


それから目まぐるしく時は流れ、志望校を早乙女学園へと変えたわたしに誰もが無謀だと言った。アイドルになんてなれるはずがないと。相川さんにはライバルにもならないと鼻で笑われた。
しかしわたしは努力した。努力して努力して、すっきりと贅肉を落とした。メイクも上手く出来るようになった。天然パーマでくるくるしていた髪をストレートにした。学年で下から数えた方が早かった順位を、両手で数えられるほど上げてみせた。そんなわたしに、いつしか無謀だと言う人はいなくなった。

そしてわたしは、早乙女学園に合格したのだ。

あの時のあいつと、落ちた相川さんを見た時、わたしは初めて自分が変わったのだと確信した。


「Sクラス、Sクラスは…ここかあ」


わたしはSクラスに合格したらしい。これも努力の賜物だと思うと自然と顔が綻んだ。
しかしこれではいけない、そう思ったわたしは顔を引き締め、ようやく見つけたクラスの扉を開いた。


「きゃあああ神宮寺さあん!」


開けた瞬間、後悔した。
なんだあの軍団は。一人の男子を囲むように女子が群がっている。しかも騒がしくて耳が痛い。その集団の中心にいる男子は満更でもない(むしろ甘んじて受け入れている)ような表情で、なんだかその顔があの男に似ていて癪に触った。


「うるさい…」


ぽつりと呟けば、なんとその小さな声が彼女たちに届いたらしい。数人がこっちを見て、眉を潜めた。


「なにあの子、うるさいだって」
「えー?僻んでるんじゃない、あたしたちと違って可愛くないし」
「確かに!ウケるんですけど!」


ウケねえよ。可愛くなくて悪かったな。わたしがため息を吐くと、その原因ともとれる男子がわたしに声をかけた。


「駄目だよレディたち、そんな事を言ったら。
ねえ、そこのレディもこっちにおいでよ」
「え、嫌です気持ち悪い」


素直にそう思ったのだ。つい口から出てしまったらしい。その時の彼らは、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしていて思わず口角が上がってしまった。

それからわたしは、彼、神宮寺レンとその取り巻きに目をつけられてしまったらしい。





prev / next


第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -