リクエスト小説 | ナノ

あやみさまへ!






「い、一ノ瀬くんが好きです!」
「はい、私もみょうじ君が好きです」
「……へ?」


わたしの一世一代の告白は、まるで羽のように軽く返された。驚きのせいもあって、わたしは思わず目の前の一ノ瀬くんを凝視してしまう。しかし彼は、やはりと言うか、いつものようにポーカーフェイスで。とてもじゃないけれど、さっきの返答が嘘だったんじゃないかと不安になるほどだ。


「う、嘘じゃなくて?」
「何故そんな嘘を言う必要があるんです、それに私はそう言った類いの嘘は嫌いです」
「は、はあ」


相変わらずの真顔でそう言い切られ、わたしは頷くしか出来なかった。一ノ瀬くんはそんなわたしを一瞥すると、踵を返して歩き出す。そのまま彼は消えてしまった。






それから数日後。特に変わった事もなく、わたしは驚く程いつも通りの日常を送っていた。


「あ、みょうじ」
「んー?」
「これ、月宮先生から。早く提出しろってさ」
「やば、忘れてた!」
「ははっ、大変だなあ、頑張れよー」


課題曲提出の催促状がわたしに届けられた。ああ大変だ、わたしのパートナーはこういう時手伝ってくれないからなあ。わたしはその紙と睨み合う。


「みょうじ君」
「…あ、一ノ瀬くん」


本当はあの日から少しだけ変わった事があった。一ノ瀬くんがわたしにちょくちょく声をかけてくれるようになったのだ。


「彼と何を?」
「え?ああ…うん、わたし課題曲の提出がまだで…」
「それはいけませんね、確か一昨日が期限では?」
「うん、だから早く作らないと」


わたしがそう言うと、一ノ瀬くんは腕を組んで考えるような素振りを見せた。


「…お手伝いします」
「え!いいよ、迷惑になるし」
「迷惑?そんな事ありませんよ」


そして彼は周りを少し気にするかのように見回すと、わたしの耳元に唇を寄せてそっと囁いた。


「恋人が困っているんです、助けたいと思うのは当然でしょう?」
「え、…ええええ!?」


恋人、…恋人!?いつからわたしたちは恋人になったのか。少なくともわたしにはその記憶は無い。しかし一ノ瀬くんは何を驚いているんだとでも言いたげな様子で口を開いた。


「…あの時、君に想いを告げられた時…確かに返事をしたはずですが」
「あ、あれで?」
「はい」
「じゃあわたしたち…その、つ、つき、あってるの…?」
「…違いましたか?」


尻すぼみに呟いたわたしの言葉に、一ノ瀬くんは仄かに頬を赤くして答えた。


「えっと…えっと、その…違わない、です…!」


そんな珍しくも可愛らしい表情を見せた彼に、わたしは何度も何度も首を縦に降った。


「…実はあれから君が話しかけて下さらないので、少し、不安だったんです」
「あ…ご、ごめんなさい…」
「いえ、再確認出来ただけで満足しました」


そう言うと一ノ瀬くんは小さな紙切れを取り出し、そっとわたしの手に握らせた。それから彼は自分の唇に人差し指をあて、細く息を出す。秘密、という事なのか。


「私の連絡先です。よければ今夜にでも連絡をください。」
「は、はい!」
「では、私はこれで」


わたしに背を向けて歩いてゆく一ノ瀬くんを見送り、わたしは静かにその紙切れを開いた。そこには確かに、一ノ瀬くんの綺麗な字で連絡先が書かれていて、思わず口元が緩んだ。


「あ…」


その下に書かれた一言。一ノ瀬くんからの追伸。わたしはその紙切れを大切にポケットにしまいこんだ。








一ノ瀬さんで激甘…に、なっていたのか…!(爆)
ツンのないデレオンリー…だったはず…が、リクエストに沿えず申し訳ありません…!
リクエストありがとうございました!







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