誕生日パーティーはもう本当に盛大に行われた。ぶっちゃけ本人そっちのけという感じになりつつある。トキヤは皆からのプレゼントを眺めながら、静かに真斗の作った料理を食べていた。
「トキヤ」
「…ああ、なまえ」
「わたしのプレゼントどう?」
「とても気に入りましたよ、とても」
「よかったあ…」
わたしはトキヤに青色の、派手過ぎないストラップをプレゼントした。わたしたちの周りは、皆の大騒ぎなんて関係ないかのように静かで、少し気まずい。
「なまえ、」
「…うん?」
「…昨日はすみませんでした」
「あ…」
「あんな事を言うつもりはなかったのに…私は…」
「いいよ!わたしが悪いんだからさ、トキヤは気にしないで」
「…違います、私はあの時、音也と一緒にいた君を見て…」
俯いたトキヤの表情は伺えなかったけれど、とても暗いものである事は見てとれた。トキヤはわたしの手を握り、そっと話し始めた。
「私は、君が好きです」
「…うそ」
「嘘ではありません。君の全てが、好きです」
そう言ったトキヤの目は真剣そのもので、むしろトキヤはこんなくだらない嘘をつくような人間ではない。
「君は、私をどう思っていますか」
「わたし、は…」
ただのパートナーなんて思ってはいない。トキヤの事は好き、凄く好き。だけどわたしがこの思いを告げる事で、トキヤの夢を壊すような事になったら。そしたらわたしは、きっと後悔する。
「わたしは、トキヤの事、パートナーとして、」
「…本当の気持ちを教えてください」
「本当の、気持ち」
きゅっと胸の前でわたしは手を握った。伝える事はこんなにも難しい事だっただろうか。だけど、今言わなければきっとわたしは死んでも死にきれないだろう。言うべきか、言わないべきか。わたしの出した答えは、本心を吐き出す事。
「好き、トキヤが、好きです」
「…その言葉が、私にとって何よりも嬉しいプレゼントです」
トキヤが繋いだ手に、少し力を込めた。わたしはその手を握り返して、ここにこうして二人いる奇跡に、ありがとうと告げる。
「トキヤ、」
「なんですか?」
「生まれて来てくれて、ありがとう」
「…はい、なまえも」
生まれて来てくれた奇跡に、ありがとう