そして、パーティー当日。わたしは皆に、トキヤに招待状を渡せていない事を打ち明けられないでいた。


「あとちょっとで11時だなっ」
「うん…そうだね…」
「どうしたんですか?昨日からなまえちゃん、元気がない、ですよ?」
「…なんでもないよ、なんでも」


皆がそわそわと、クラッカーの準備をしている中、わたしは一人こっそりと教室を出た。このままじゃ、絶対にトキヤは来ない。迎えにいかなくちゃ。きっとそれは、わたしにしか出来ない事だと思うから。


「なまえ!」
「…、音也?」
「どこ行くんだよ、これからトキヤも来るってのにさ」
「そのトキヤを、迎えにね」
「なんで?」
「それは、」


そう聞かれ、思わずわたしは息詰まった。ぎゅうっと手のひらを握り締め、わたしは呟く。


「渡せて、ないの」
「え…」
「トキヤに招待状、わ、渡せなくて…」


涙が目に浮かび、溢れ落ちそうになる。音也はそんなわたしの頭にそっと手を回し、抱き寄せた。


「落ち着いて、何があったか教えて…?」


耳元で聞こえる温かな音也の声に、わたしは昨日の事をぽつりぽつりと話した。


「そっか、うん、わかった」
「ごめ、わたしが言い出した事なのに…っ」
「大丈夫、俺から皆に言っておくから。なまえはトキヤの事、迎えに行って」


音也はそう言って微笑み、とんっとわたしの両肩を押す。わたしはそんな音也に踵を返し、走り出した。


「馬鹿だなあトキヤは、…頑張って、なまえ」







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テーマ「人外ファンタジー」
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