わたしの足は自然と、レコーディングルームへ向かっていた。昨日トキヤがいた場所。今日もいるかなんてわからないけど、何故かトキヤはそこにいる、そんな核心がわたしにはあった。


「は、あ…はぁ…っ」


息は上がるし、足はもつれる。わたしの体は思うようには動かず、もどかしい。早くトキヤに会いたいのに、皆の所に、連れていかなければいけないのに。


「…っトキヤ!」


ようやく辿り着いたレコーディングルームの扉を思い切り開ける。そこに、トキヤはいた。


「何故なまえ…君がここに…」
「はぁっ…は、っハッピーバースデー!トキヤ!!」
「な、」
「トキヤがわたしの事嫌いでもいいよ!でもね、皆は、わたしはトキヤが大好きだから…!」


何を言っているかなんてわからない、けどわたしはただ目の前で呆然とするトキヤに叫び続けた。


「だから、行こう!」
「っ、一体、どこに…」
「教室!」


わたしはトキヤの腕を掴み走り出した。最初わたしに引き摺られる形だったトキヤは、途中から逆にわたしの腕を取って走っていた。


「言いたい事はたくさんあります、けれど今は、」
「…っ」
「私も君が、」


トキヤがその続きを紡ごうとしたその瞬間、目の前に迫っていた教室の扉が開け放たれた。ぱあんぱあん!と響くクラッカーの音、そして、皆の笑顔。


「「ハッピーバースデー!」」


肩で息をするわたしたちに降り注ぐカラーテープ、トキヤへの言葉。真斗と春歌ちゃんがピアノを弾き、皆が歌い出す。


「これは…」
「トキヤの誕生日パーティー!」
「こんな大掛かりな物をよくもまあ…」


そう言ったトキヤの瞳には、うっすらと涙が浮かんでいるように見えた。


「ありがとう、ございます」
「え、」
「こんなにも嬉しい誕生日は、初めてですよ」


その時見たトキヤの笑顔は、わたしにとって何にも変えられない大切な宝物になった。


「おめでとう、トキヤ」
「ありがとうございます、なまえ」







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