「誰かいるのかな…ってトキヤ!?」


ここにいるはずのない音也の声が聞こえ、私は思わず顔をしかめそうになった。いけない、今はHAYATOなのだから。HAYATOはそんな顔をしたりはしない、常に笑顔でいるのが当たり前。


「今日こちらのお店について詳しく!皆にお伝えしまーっす!」


そしてここで一旦カットが入る。私は周りの野次馬に軽く手を降り、音也を見た。けれどその隣になまえの姿を見つけた瞬間、私の中で何かどろりとした汚い感情が目を出した。ああなんでこんなにも心が騒ぐのか。


「じゃあ次のシーンに行きまーす」


私はその言葉に意識を取り戻した。いけない、私とした事があの程度で取り乱したりなんかして。しかし気にならない訳ではない、私はもう一度音也たちの方を見た。彼らは手を繋ぎ、私に背を向けて歩き出している。何かが崩れたような気がした。線引きをされたような、そんな気持ち。


「……あ、す、すみません、もう一度お願いします」


ああこんなにも掻き乱される。この感情は一体、何なのか。私は心に蓋をして、一ノ瀬トキヤを奥の方に押し込めた。


今は、HAYATOなのだから。







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