ついにこの日がやって来た。早乙女学園の受験日、考えるだけで手が震えて緊張する。


「お待たせっ、春歌ちゃん!」
「あ、千早ちゃん」


わたしは春歌ちゃんと学園まで一緒に行く約束をしていた。待ち合わせ場所には既に春歌ちゃんが来ていて、わたしは肩で息をしながら呼吸を整える。


「そ、そんなに急がなくても…まだ時間はある、んですし…」
「だめ、だよ…春歌ちゃん待たせちゃったんだも…ん…」
「そんな…気にしないでください。それに急いで事故にでもあったら、元も子もないから…」
「うん、ごめんね。…ありがとう」


本当に心配してくれている春歌ちゃんに、不謹慎ながら笑ってしまった。こんなに自分の事を心配してくれるのは、トキヤくんやお兄ちゃんの他にいなくて嬉しくなってしまったから。
それからわたしたちは雪が降る道を二人で歩き始めた。さくさくと積もった雪を踏み締めて、お互いに緊張からか何も喋らない。はふ、と息を吐き出せば真っ白な吐息が塊となって現れた。


「きゃ…!」
「わ、春歌ちゃん!」


道が上り坂に差し掛かった時、春歌ちゃんが雪に足を取られて転んでしまった。わたしも転んでしまわないように、ゆっくりと春歌ちゃんの腕を取って体を起こしてあげようとする。


「だ、大丈夫?」
「はい…す、みません…」


そして春歌ちゃんが立ち上がろうとしたその時。わたしの足も雪に取られ、春歌ちゃんを巻き込んでそのまま地面にダイブしてしまった。雪に埋まった顔が、冷たい…。


「千早ちゃん!だ、大丈夫ですか!?」
「う…ご、ごめんね春歌ちゃん…」


春歌ちゃんによって体を起こしたわたしは、お互いに雪で真っ白になったわたしたちを見て思わず笑ってしまった。春歌ちゃんもそんなわたしを見て、くすくすと笑い出す。


「あはは!…なんか、緊張が取れちゃった!」
「ふふ、わたしも」
「よし、じゃあ頑張ってこの坂、登っちゃおうよ!」
「はいっ!」


それからのわたしたちは、さっきまでの緊張が嘘の様に取れ、笑いあいながら歩き出した。








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