jojo | ナノ


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金欠だ。
これまでにない程に金欠だ。
どうしてこんな事になったんだと思い返してみると自分がお菓子を買いまくっていたのが原因だとすぐに解った。

お菓子買いすぎて金欠とか子どもかよ。
いや、確かにまだ十代の少女だけども。
しかし私はこれでもパッショーネの一員、ギャングだ。
ギャングがお菓子買い過ぎで金欠だなんて恥ずかしくて言えないわ。
だけど背に腹はかえられない。

ちらりと視線を横に向ける。
少し離れた所で我らがボス、ジョルノが書類とにらめっこしている。
以前見せてもらった事があるけど私には理解できない内容だった。
やっぱり私は頭が足りないんだなあ……。

先程、私はジョルノのところに転がり込んだ。
目的はその、お金を借りにだ。
しかし中々言い出せず、ただただ無言でソファに座るだけの時間を過ごしている。
最初こそ私を気にしていたジョルノも私が何も言い出さないと解ると執務に戻ってしまった。
でも退室を命じないところを見ると私が言い出すまで待ってくれるようだ。

「ねえ、ジョルノ」

「……なんです?」

声を掛けると一拍置いて返事が返ってきた。 
相変わらず視線は書類の方を見ている。

「その……お金、借りちゃダメ?」

「ダメです」

「そっ、そこを何とか!」

両手を合わせて拝むように頼み込む。
ここで断られたら他の誰かに借りるしかない。
だけど他の誰かなんてミスタくらいしか思いつかない。
でもミスタも私と同類だと思う。
ピストルズの食費で金欠になってそうだ。

「この間の給与は何に使ったんです」

「えっと、お菓子を少々……」

「馬鹿ですか」

「返す言葉も有りません」

気まずくてジョルノから視線を背けた。
見なくても感じる。
ジョルノの氷のように冷え切った視線を。

「金がないなら仕事をするなり何かを売るなりしたらどうです」

「売る?」

確かに持っているものを売れば手っ取り早く金が稼げる。
頭の中に売れそうなものを思い浮かべてみる。
家電は生活が困難になるから却下。
服も必要最低限しか持ってないからこれ以上減ったら本当に着るものがなくなってしまう。
漫画やCDなども持っていない。
あれ、 もしかしなくても売れるものないじゃん。

「売れるもの、ない」

売るものもなければ仕事もない。
ちょっとどころか、かなりヤバイ。
ああ、お菓子が恨めしい。
あんなに美味しいのが悪いんだ。

「売るものならあるでしょう」

「えっ、どれ!?」

絶望に沈んでいた気持ちがジョルノの一言で浮かび上がった。
まさか私にも売れるものがあっただなんて!
流石ジョルノ、頭の出来が私とは違う。

「それ」

「?」

それ、とジョルノは私を指さした。
自分を見てみるけど今日はアクセサリーも着けてないし、服だって別にブランド物ではない。
売ったところで一食分の食費にすらならないだろう。

「君の身体があるじゃないか」

「えっ」

思いがけない言葉に表情が固まった。
これはどういう意味で捉えたら良いのだろう。
臓器を売れと言っているのか、女を売れと言っているのか、はたまた冗談か。
普段、冗談なんて滅多に言わないジョルノだから余計にどう反応を返せばいいのか解らない。

「えっと、ボスのえっちぃー」

少し考えた末に冗談だろうと結論付け、私も冗談で返した。
だけどジョルノはクスリとも笑わず、表情も変わらなかった。
ちょっとぉ……この微妙な空気どうすんのよ。
完全に滑り散らかしてるじゃない。
不満げな視線をジョルノに向けると、バチリと眼が合った。

「僕が買ってあげようか?」

「え?」

ジョルノが椅子を立ち、私の方へと近づいてくる。
え? え? 買うって何を……?

「僕が、君を買いますよ」

それほど広くない室内では、すぐにジョルノは私の眼の前に来た。
座っているから必然的にジョルノに見下ろされる形になる。

「どうです?」

「えっと……」

現状を理解しようにも頭が上手く働いてくれない。
どうすれば良いのか解らない。
ジイっと見下げてくるジョルノのその眼から視線を逸らせない。
ずっと見つめていたら、うっかり頷いてしまいそうだった。
緊張からか、ゴクリと喉が鳴る。
無意識に右足が動き、微かに靴の擦れる音が聞こえた。

「お……ッ」

喉から搾り出すように出した声は少し上擦っていた。

「お断りしますーッ!!」

叫ぶように声を上げ、私は脱兎の如く走り出し部屋を出て行った。

「逃げられちゃったか」

なんて少し楽しそうに零したジョルノの声は聞こえなかったふりをした。



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