小説 | ナノ


いつからか戦闘要員として数えられてた。
戦闘要員といっても他の友人等に比べたら弱弱な雑魚で。
時々ふと自分は足手まといなんじゃないかって考えてしまう。
そんなことを考えならが一人学校の屋上でアンニュイに浸っていたら来訪者が現れた。

「おっ、やっぱここにいたのな」

「山本」

来訪者は友人一号山本武だった。
こいつもいつの間にか野球少年から刀小僧にクラスチェンジしてた戦闘要員だ。
だけど私と違ってかなり強い才能の塊である。

「なにしてんだ?こんなとこで」

「感傷に浸ってんの」

「ははっ、なんだそれ」

笑いながら山本は私の隣に腰を下ろした。
暇つぶしに来たのか私に用があって来たのか。
特に何か話し出さないところを見ると前者だろう。

「……ねえ、山本」

「んー?」

サア、と気持ちの良いそよ風が頬を撫でていく。

もうじき秋が終わる。
季節を重ねる毎に感じる不安と焦燥。
沢田はきっとこのままボンゴレ十代目になるのだろう。
そうなったらおそらく自分達もその世界に完全に足を踏み入れる。
その時も私がこんなに弱いままだったらと嫌でも考えてしまう。

もしも私が弱いせいで友達が、目の前にいるこの男が傷つくことがあったら。
傷つくだけじゃない、もし命を落とすことになってしまったら。
そう考えるだけでキュッと心臓が締め付けられる。

「もし私が足手まといになって誰かを危険に晒すことがあったら……」

こんなことを善意の塊みたいな山本に話すのは間違っているだろうか。
でも話せるのは彼しかいないと思っていた。
ただの私の願望、自分勝手な願いだ。

「その時は、私を殺していいよ」

言い終わると山本はパチクリと目を見開いて私を見た。
その視線から逃れるように視線を空に向けた。

「なあ、苗字」

「なに?」

「俺さ、苗字が好きだぜ」

だから絶対殺さない、と続けられた言葉に今度は私がパチクリと目を見開く番だった。
視線が空から山本へと移すと、彼は照れくさそうに頬を掻いていた。
そんな山本を見ながら、好きってどっちの意味だろうとぼんやり考える。
山本の表情が中途半端すぎて友情か恋情か、どっちで捉えればいいか決めあぐねてしまう。

「……それって告白?」

「ああ」

直接本人に問うたらさっぱりとした答えが返ってきた。
自分を好いてくれてる人間に「殺していいよ」なんて物騒なことを言ってしまうとは。
しかも告白までさせてしまうオマケ付き。
なんだかとても申し訳なさを感じてしまう。

「俺、絶対苗字を護ってみせる」

ぎゅっと手を握られる。
真剣みを帯びた眼差しにドキリと胸が高鳴った。
普段へらへらしてるのに急にこんな表情を見せるんだもの。
ギャップを見せていくのは卑怯だと思う。
断るという選択肢が自分の中で消えていくのを感じた。
いいえ、そんなもの最初からなかったのかもしれない。

「……頼りにしてるよ」

「好き」という言葉が気恥ずかしくて言えない。
これは今の精一杯の言葉だ。
これで伝わってくれるのかと不安を抱いたが、杞憂だった。
だって私の言葉を聞いた山本はいつものように明るく、嬉しそうに笑ったのだから。


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