小説 | ナノ


恋をしている女の子は可愛い。
そんな言葉を耳にする事があるけど、その通りだと思う。

私の親友の三浦ハルちゃんも今絶賛恋の真っ最中で、大好きな「ツナさん」の話をよく話してくれる。
その時のハルちゃんはキラキラ輝いていて、ただでさえ可愛いのにもっともーっと可愛くなってしまう。

「名前ちゃん、どっちが良いでしょう?」

パッと目の前に出されたのは二着の水着。
英字柄のビキニとフリルのワンピース。

「ビキニの方が絶対ハルちゃんに似合うよ」

即答するとハルちゃんは「じゃあこっちにします!」とウキウキでビキニをレジカウンターに持っていった。

今日の私はハルちゃんのお供。
今度ツナさん達と海に行くらしく、彼を魅了しちゃうような水着を買いに来た次第だ。

ハルちゃんもツナさんも一生知る事はないだろう。
今日選んだ水着が、私好みのものだなんて。
これを着たハルちゃんを私が見たいから選んだなんて。
きっと一生知らないだろう。

「はひー、名前ちゃんお待たせしました!」

「おかえり、ちゃんと買えた?」

「もちろん! はあ……ツナさん褒めてくれるでしょうか」

ぽややんと恋する乙女の表情で呟くハルちゃん。
ハルちゃんの頭の中でツナさんはどんなふうに彼女を褒めているのだろうか。
そんなこと私には解りっこない。

「ほら、次はアクセ見に行こ?」

「はい!」

恋をしている女の子は可愛い。
私みたいに、失恋確定の片想いをしている女の子でもそうなのかな。
好きな子に好意がバレないように振る舞い、会ったこともないツナさんを妬む私でも可愛いのだろうか。

「名前ちゃん、お揃いにしませんか?」

「いいね、そうしよ!」

だけど、思うの。
何かあった時に真っ先に頼ってくれるのは親友の私だけの特権だって。
だから叶わなくても、私の恋が可愛くなくても、その特権があるだけで私は幸せでいられるんだって。

お揃いで買ったネックレスが胸元でキラリと光る。
遠い未来に、この恋心が思い出に変わっても私はこのネックレスを手放しはしないだろう。



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