私の恋人は女の子。
健気で可愛くてか弱く見えるけど意志の強い素敵な子。
そんな子とついにこう……事に及ぶ機会が訪れたわけで、自分の中で当然私がリードするもんだと思っていた。
だけどいざとなるとベッドに押し倒されたのは私の方だった。
あれ……なにがどうなっているの。
「えっと、クロームちゃん?」
「なに……?」
未だに状況が飲み込めなくてクロームちゃんに声をかけると、彼女は微笑みながら首を傾げた。
その拍子にクロームちゃんの髪がさらりと流れて、あっ色っぽいなんて考えてしまう。
いや違うそれどころじゃない。
「クロームちゃんが上になるの?」
「うん」
「えっと……大丈夫なのかなー、なんて」
しどろもどろになりながら告げた言葉はクロームちゃんの機嫌を悪くしてしまうかもしれない。
でも言わずにはいられなかった。
だってクロームちゃんは可憐で、きっとこんな行為とは無縁の清純乙女のはずだもの……!
「大丈夫、骸様に教えてもらったから」
「え、それってどういう」
こと、と続くはずの言葉は唇と共に塞がれた。
何回も確かめるように合わせられる唇に頭がぽやーんとなってくる。
ぽやってるうちにクロームちゃんが私のお洋服のボタンを手際よく外していく。
「あっ、待って……」
「だめ」
ボタンが全部外されておっ広げにされたかと思うと、スルリとお腹から背中へと撫でられ、そのままホックを外された。
「名前、大好き」
「はわわ……」
ちゅ、と胸元に唇を落とされ、自身の理性が崩れていくのを感じた。
色々訊きたいことあるはずなのにどうでも良くなってきてる。
なんかもうこのまま熱っぽい雰囲気と愛しさに身を委ねてしまおう。
終わった後に覚えていたら訊けば良いや……。
***
「ちょっと、六道骸さん」
物陰からこっそりと目的の人物、六道骸に声をかける。
面と向かって話しかけないのは気恥ずかしさと疑念からだ。
クロームちゃんとの初体験を終え、やっぱり頭に残ったのは件の「骸様に教えてもらった」発言だった。
どうやって、どんなことを教えてもらったのかクロームちゃん本人には訊けなかった。
だってもしも、もしもだよ、実技講習とかだったらもう立ち直れる気がしない。
そんなことクロームちゃんの口から聞かされるくらいなら六道骸から訊いて、事と場合によっては彼をぶん殴る方が断然マシだ。
「なんです?」
「クロームちゃんになにを教えたんですか」
「クフフ、君が体験したことですよ」
なんかニヤニヤ笑い始めてムカつくので足元に落ちてる小石を何個か六道骸に向かって投げるが一個もヒットせず、余計に苛立ちが募る。
「この間男! 寝取り魔!」
「……なにか勘違いしているようですが、僕は一切クロームに触れていませんよ」
「えっ、マジで?」
じゃあどんなふうに教えたのだろうか。
律儀にホワイトボードでも用意して「女性同士の致し方」とかマーカーで書いたりしたのか。
それとも保健体育の教科書を用意して学校の授業よろしく講義したのだろうか。
ともあれ私の想像はただの下種の勘ぐりだったわけで、とりあえず小石を投げたことだけ謝っておいた。