ツ、と頬を汗が伝っていく。
今年の夏も中々暑く、冷房の無いこの場所で過ごすのは中々に苦行だ。
自分の家に帰れば済む話だがそうはいかない。
私の隣りのこの男が逃がしてはくれないだろう。
「六道君、暑い」
「僕は暑くありません」
「そりゃあ六道君は南国産だから……」
この男、六道骸は一応は私の恋人である。
あくまで一応、不本意ながら、仕方なく。
一目惚れしましたと初対面開口一番に告げられた時、彼の着る黒曜中学の制服にビビった私は頷くしかなかった。
だって黒曜中と言えば治安が悪いことで有名の学校。
ここで首を横に振ろうもんなら後ろから黒曜中生がぞろぞろ出てきて袋叩きにされると本気で思っていた。
だけど袋叩きだろうがなんだろうがここは逃げるべきだったと後悔している。
付き合ってみるとこの六道君は本当にやばい人間だったのだ。
同じく黒曜中生の柿本君と城島君の三人で廃墟に住み、なんか悪い事を企んでいるのか三人でよく解らない事を話してたりする。
私の事も家に帰すつもりはないようで銭湯や買い物のみ外出を許されてるけど、必ず誰かと一緒じゃないと外に出してもらえない。
「おや、人の事を馬鹿にする口はこれですか?」
「いふぁいよ、やめふぇ」
南国産発言が気に入らなかったのか両頬を抓まれた。
地味に痛い。
六道君の手を叩いて抗議すると彼はクフフと笑いながら離してくれた。
「ねえ、六道君。 私いつまでここで暮らせばいいの?」
もう何度目か解らない問いかけをぶつける。
最初はびびり散らしていたけど、もう軽口を叩けるぐらいには一緒の時間を過ごしている。
未成年の自分がこんな長い間家に帰っていないんだ。
捜索願だって出されているだろう。
……それにしては外出しても何の騒ぎにもならないけど。
「そうですね……僕がボンゴレを乗っ取るまで、でしょうか」
「へ?」
よく解らない言葉が六道君の口から飛び出した。
ボンゴレってなんだっけ……。
えっと……確か貝?
貝を乗っ取るって一体なんなのか。
そこまで考えてピンときた。
六道君達は貝の密漁をしようとしている、と。
やっぱり六道君達はやばい人達だったようだ。
三人で何か話していたのも密漁の計画に違いない。
私に三人の犯罪を止める力は無いけれど、どうか自分が巻き込まれない事を願うばかりだ。