小説 | ナノ


「もしも僕を殺すとしたら、どうやって殺しますか?」

「……ん?」

唐突に問いかけられた言葉。
自分の聞き間違いかと耳を疑い隣りを見ると、問いかけてきた張本人であるジョルノは何食わぬ顔をしていた。
やはり私の聞き間違いかと思った直後、再びジョルノが「どうやって殺しますか」と問いかけてきた。
ああ、そうですか。
聞き間違いではなかったということですか。

「えっと、ジョルノは私に殺して欲しいの?」

「そういうわけではありません。 ただ、貴女なら僕をどうやって殺すのか気になって」

「あ、そう……」

なぜそんな事が気になるのだろうか。
やっぱりジョルノは少し変わっている。
普通の恋人は、こんなこと訊いてこないと思う。

「ほら、早く答えてください」

「ちょ、ちょっと考えさせて!」

答えを急かされ、慌てて考えを巡らせる。
しまった、自分から「答えない」という選択肢を潰してしまった。
予想外の事が起こると上手く考えを巡らせられないのが私の欠点だ。

「えっと…ジョルノならどうする?」

少し考えた末、何も答えが出なかったためジョルノに質問を投げ返した。
所謂時間稼ぎだ。
ジョルノは曖昧な返答を好まない。
今の私の思考回路じゃ、ジョルノの満足のいく回答は出来ないだろう。
だからジョルノが答えを少し参考にさせてもらおうと思う。

「……そうですね、僕なら」

何と答えるのだろうとジョルノを見た。
するとジョルノも私の方に視線を向けた。
目が合うと、ジョルノは少し微笑んで更に言葉を続けた。

「僕なら、こうします」

ゆっくりとジョルノの左手が私の方へと伸びてきた。
そして私の首筋に指を這わせたかと思うと、緩やかに首を掴んできた。

「……絞殺するの?」

「ええ」

首を掴まれた瞬間心臓が跳ね上がったが、別に力を込められているわけではないので直ぐに平常心を取り戻した。
まだ心臓が少しドキドキしているが問題はない。

「スタンドも武器も何も使わず、素手で殺します」

「……」

「貴女を殺した感触が手に残りますから」

「…そっか」

参考にしようとジョルノの答えを訊いてみたものの、訊かなきゃ良かったと少し後悔した。
何だか怖いよ、ジョルノ。
しかもなんか首を掴む力が少し強まってるし。
苦しくはないけど恐怖を感じるんですけど。
せっかく平常心を取り戻したというのに恐怖一色だ。

「ナマエは、どうやって殺しますか?」

ジョルノが再び問いかける。
相変わらず好きな音楽や趣味を訊くかの様な物言いだ。

「………銃殺する」

「なぜ?」

「一番殺した感触が残らないと思うから」

そう言うとジョルノは残念そうな顔をした。
ちょっと待て、何だその顔は。
なんで残念そうな顔をしてんのよ。

「僕はナマエの手で直接殺して欲しいです」

「あ、そう…」

残念そうな表情のまま言ってのけたジョルノ。
本気で言ってるかのようだ。
いや、“かのよう”じゃあなくて本気なんだろう。
本気だからこそ質が悪い。

「って、何でこんな物騒な話ししてるのよ」

もっと明るい話しましょ、と提案する。
するとジョルノはふわりと微笑んで「はい」と承諾した。
そこで漸く私の首を掴んでいた手が離れていった。
痛みは無いけれど、掴まれていたという感触が残っている。

「そう言えば、ナマエが気になっていると言っていたお店なんですが…」

いつも通りの日常的な話をし始めたジョルノに相槌を打ちながら私はジョルノとは暫く距離を置くことを決意したのだった。

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