静かな室内には紙の擦れる音だけが鼓膜を揺らす。
この静かすぎる空間は心に安らぎを与えてくれるようだった。
いや、この安らぎは静かな空間だけが原因じゃあない。
きっと彼がこの空間に居るからだ。
視線を横に移すと綺麗な横顔が視界に入る。
その横顔は同じ人間だとは思えないほど端麗で、まるで…。
「どうかしました?」
半ば夢心地のような思考は一つの声によって打ち消された。
声を発したのは私が見ていた横顔の人物、ジョルノだった。
どうやら見つめすぎていたらしく、ジョルノは少し眉尻を下げて私に視線を向けた。
「ジョルノが綺麗だなあって」
私の言葉にジョルノは少し照れたように「ありがとう」と言った。
その表情も美しかった。
きっと彼の中には醜い表情なんて存在しないのだろう。
それが何よりも尊い物の様に思えた。
「ねえ、笑わないで聞いて」
「なんです?」
「私、初めてジョルノを見たときね」
「ええ」
まるで内緒話するかの様に声を潜めてしまう。
この空間には私達2人だけしか居ないのに。
きっとこの話をするのは今日が初めてだからなのかも知れない。
「天使様だと思ったの」
「天使?」
「そう、天使様」
ジョルノから小さく笑い声が上がる。
綺麗に笑う顔を見て私も笑みを浮かべた。
2人で顔を合わせて笑い合う。
「今でも君は僕を天使だと思う?」
「ええ、もちろん」
この問いの答えに迷いは無かった。
ギャングという天使様とは言い難い立場に居ようとも彼が天使様であることに変わりはなかった。
視界に入れるだけで安らぎを得ることが出来る存在を天使様だと言わず何だというのか。
きっと彼の様な存在と出会えるのは長い人生の中でも、もう一生無いだろう。
「ジョルノ」
「なんですか?」
「愛してるわ、私の天使様」
その言葉と共にジョルノの頬に唇を落とした。
するとジョルノは再び綺麗に笑った。