小説 | ナノ


私には年下の恋人が居る。
年下だけど落ち着いていて妙に大人っぽい。
一緒にいると楽しいし、何より私を愛してくれている。
そんな彼のことを私も愛していた。
だけど最近の彼はどこか変だ。
嫌に嫉妬深いというか、束縛が激しくなった気がする。
最初は気のせいだと思っていたけれど、どうにもそうではないようだ。



「どこに行っていたんですか」

久々に友人と出掛け、帰ってきたら恋人であるジョルノが来ていた。
帰ってきた私を見るなり責めるような口調で問いかけてきた。

「昨日も言ったでしょ。 友達に会いに行っていたの」

「行っちゃダメって言ったじゃないですか」

ジョルノに腕を掴まれる。
怒りを感じているのか力が入っている。

「私は承諾した覚えないわ」

「拒否もしませんでした」

反論すると間髪入れずジョルノは言葉を吐く。
こういう時だけジョルノは子どもっぽくなる。
普段ならばたまに見せる子どもらしさは可愛く見えることだろう。
だけどこういう場面での子どもっぽさは私は好きじゃあない。

ジョルノに鋭い視線を向けると、ジョルノは哀しそうに眉尻を下げた。
なんでアンタがそんな表情をするのよ。
まるで私が悪いことしているみたいじゃないの。
ジョルノの視線に耐え切れず、私の方から視線を逸らした。

「僕を不安にさせないでください…」

ぽつりとジョルノが呟くように言った。
小さな声だったけれど静かなこの部屋ではよく聞こえた。

「さもないと貴女を閉じ込めてしまいそうだ」

驚き、ジョルノに再び視線を向けた。
それと同時にジョルノに抱き締められた。
抱き締められるとジョルノの表情が解らない。
ジョルノの言葉が本気なのかどうかも分かり兼ねる。

「……ねえ、冗談でしょ?」

訊くがジョルノは何も答えなかった。
肯定とも否定とも取れる態度に、正直逃げたくなった。
なんで私、この子と付き合っているんだっけ。
そういう考えまで浮かんでくる。

「愛していますよ、ナマエ。 絶対に離したりしません」

耳元で囁かれる愛の言葉を聞きながら目を閉じた。
いつか近いうちに私は彼の元から逃げるだろう。
別れを告げたところで応じてくれるわけがないもの。
厄介な人に好かれてしまったものだ。

しかし一時でも私が愛した人。
厄介と思いながらも完全に嫌いになることは出来なかった。


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