部屋に戻るとそいつは寝ていた。 俺はこの短時間に完全に寝れるとは、と感心しつつ持ってきた毛布を掛けてやった。温かい紅茶も持ってきたのだが、これでは冷めてしまうな。 あぁ、聞きたい事、言いたい事、たくさんあったのに。もどかしいったらない。まず名前と歳と、あとこうなったからには自殺に至ろうとした理由も聞かなきゃいけない。 こうなったらからには、とは。 そう、こいつの面倒を見ようと思うのだ。 つまるところ、居候。 父さんは承諾してくれるだろうか。 まず第一にこいつにこの家に住まないかと言ったらこいつはどう反応するだろうか。また嫌がって暴れるかもしれない。たとえそうなっても行くところが無いのだから逃がす訳にはいかない(ものすごい言い方だが)。俺はただ助けてやりたいのだ。独りで生きていく辛さを俺は知っているから。 春奈と別れてからのあの絶望感は忘れられない。それに、どうも春奈と重ね合わせてしまうのだ。両親が飛行機事故で亡くなった直後の春奈と。もう涙が途切れる事は無いんじゃないかと思うほど泣く姿がそれとなく俺に春奈を思わせた。 ソファーに寝ているそいつに目線を傾けると、毛布をぎゅっと胸の前で抱き締めていた。俺は唇に桃色が宿ってるのを見るとホッと胸を撫で下ろした。 なんとなく、規則的な寝息を立てるそいつをじっと見ていた。すると、突然パチリと瞼が開いて俺と視線がバチッと音を立てたようにぶつかった。 瞬間、そいつはソファーからずり落ちて床に倒れこんだ。
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