私が握った時、鬼道さんの手は一瞬びくっとして、そのあと私の手を握り返してくれた。ぎゅっと優しくて、力加減を知っているお兄ちゃんの手だった。
「俺がついていてやるから」
お兄ちゃんはいつも私がへまをした時、鬼道さんが言ったような言葉をかけてくれて、助けてくれていた。私は鬼道さんにお兄ちゃんを重ねた。
鬼道さんのおかげで、お父様と女中さんに私はちゃんと謝ることができた。でも、お父様に「心配したんだぞー!!」とおもいっきり抱きしめられてそれは嬉しいのだけど、背中が少し痛くなった。夕食を食べてお風呂に入った後、私と鬼道さんは自室に戻っていっていた。ドアの前、鬼道さんは私と別れる時にゴーグルをさっと外してフッと微笑んで一言。
「おやすみ」
細められた鬼道さんの赤色の目に思わず見とれてしまって、私が返事をしたのは鬼道さんが手を小さく振って立ち去ろうとしていた時だった。
「おやすみなさい!」
私は鬼道さんがいなくなった廊下をぼうっと見つめた後、ドアをパタリと閉めた。そしてベッドに横たわって壁際に寄る。鬼道さんの部屋はすぐ隣。目を瞑ってすぐに思い出される、今日見た鬼道さんと知らない女の子が一緒に歩く姿。鬼道さんはすごく楽しそうだった。私は鬼道さんを困らせた。鬼道さんは私のことどんなふうに思っているのかな、やっぱり迷惑かな。私は優しい鬼道さんが好きだけれど、いつまでもその優しさに甘えているわけにはいかない。早くお父さんを探し出さないと。 どうも夜になると余計に考えが暗くなる気がすると思いながら、私は電気を消した。真っ暗な部屋。枕に顔を埋める。
鬼道さんは何をしてるかな。
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