甘いのも時には良いものだ、と思いながら名前が作ってくれた卵焼きを食むも目にはしょっぱいものが浮かんできそうだった。俺は春奈から尋問にあっていた。元々妹には弱い。こんなふうに迫られたら易々と口を開くに決まっている。
「誰!?誰が作ってくれたの!?女中さんじゃないのはお見通しよ!そうね……、きっと彼女さんでしょう!でもあれ?お兄ちゃん彼女いたっけ?」 「ちがういないしちがう」 「じゃあ誰なの!」 「……名前」 「だあれ?初めて聞くよ?」 「居候の、名前」
腹を括って俺が言うと、一瞬喧騒が止み束の間の静寂が流れた。豪炎寺がカリフラワーを箸から落としたと同時に教室に悲鳴が沸き起こった。耳を塞ぎたくなった。
「名前、っていうことは女の人よね?お兄ちゃん!」 「え、あぁまぁ……」
そこでまた一際大きな悲鳴が起きた。俺のそばに女がいるのがそんなに驚く事か。正直俺も驚くけどな。
「これは……!!音無春奈!記者生命をかけて全力で取材を務めたいと思う所存であります!!」 「勘弁してくれ」 「今度会わせてよ!お兄ちゃん!」 「……全く聞いてないな」
春奈のやつ、「お兄ちゃん」て呼べば簡単に許してくれると思って……。「わかったよ」と簡単に折れてしまう俺も自分でもどうかと思うが。結局、機会があったらみんなで会いにいくという事に落ち着いた。こっちは全然落ち着いちゃいないがな。
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