時間が経つのは早いもので、それもゲームなんかしていると恐ろしいくらいの早さで外は暗闇に包まれていった。夕食を皆で食べた後、俺は佐久間と源田を送った。といってもある程度の距離で家までではないが。俺達三人は街灯の明かりをたどっていく。不意に佐久間が口を開いた。
「つーかさ、何で名前ちゃんと一緒に住む事になったんだよ?」 「俺も気になってた」 「それはだな……、話せば長くなる」
名前の事を話すのはいささか気が引けたというか、言ってもいいのだろうかという躊躇いが俺にはあった。しかし、こいつらにはもう名前の事を知られてしまったし、いざ名前の口から事の経緯を話すというのは酷な事だと思う。何故名前の事情を話さねばならない事が前提になっているのか。それは、こいつらと名前がもう仲の良い友達になっているからだ。
俺が名前の居候しているわけを佐久間と源田に話し終わると、二人共神妙な面持ちをしていた。
「あんなに健気なのに、名字さん大変なんだな」
源田が擦れた声で言う。冷たい夜の風が更に悲しみを誘った。そんな時突然佐久間は立ち止まり全身を震わせた。そして、そういう空気を打破するような大声で叫んだのであった。
「俺、名前ちゃん元気づけたい!!!!!」 「近所迷惑だぞ」
俺の忠告を無視して佐久間は続ける。俺としてもその気持ちは嬉しいのだが、かなり声がでかい。
「あっそうだ!今度名前ちゃんとサッカーやろうぜ!」 「いいなそれ」 「だろだろ!」
俺は名前に出会った日、サッカーをしたのを思い出した。あの時は徹底的に避けられていて俺が参加した瞬間、名前は本気でボールを追わなくなったっけな……。円堂達とサッカーをやっていた時の生き生きとした笑顔が頭を過る。もう一度、あの笑顔を見たい。笑顔の名前とサッカーやりたい。
「いい、かもな」 「だろー!でも名前ちゃんか弱そうだから平気かな」 「意外と名前はやると思うぞ」 「おっ、まさか鬼道が指導してるとか〜?」 「なわけないだろ」
笑い交じりに答えれば、佐久間も源田も笑った。長い付き合いのこの二人。一緒にいると居心地がいいので、気付けば結構歩いてきていた。ある丁字路で俺達は別れた。
次会う時は、帝国のグラウンドでな。
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