「どうしてそんなに学校行きたくないの?」


そう女中さんに尋ねられたのは、今朝着替えを渡された時だった。因みに明日からはチェストにたくさん服を入れておいてくれるらしい。あと目覚まし時計も頂けるらしい。感謝感謝だ。明日はきどうさんより早く起きてきどうさんにおはようといってらっしゃいを言うんだ。


「見てたんですか」
「いいえ、御主人様のお部屋の前を通る時ちょっと聞こえたのよ」
「そうなんですか」


そしてまた、女中さんに「どうして?」と聞かれる。ばつが悪いような居心地の悪いようなそんな気持ちになる。でも女中さんの微笑みを見ると女中さんになら言ってもいいかな、という気持ちに変わっていった。


「私は、きどうさんと一緒にいたい。いたいけどきどうさんは私立の雷門中で」


女中さんの優しい相槌で私は言葉を継いだ。


「私立はお金がかかってしまいます。でも公立の中学は、私は、嫌で。わがままなのは、わかっています」
「わがままね」
「そう……ですよね」


女中さんの顔色を恐る恐る伺う。先ほどの女中さんの声色が少しばかり怖かったからだ。しかし、女中さんは変わらず包容力のある笑顔をしていた。


「そんなわがままさんに、いい方法があるわよ」
「えっ」


女中さんにおでこを突かれ言われた一言に、私の心はめらめら燃えたぎった。


「特待生を狙えばいいじゃない」







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