本を閉じると、今までこらえていたものが一気に涙となって放出された。
この本はとある家族の物語だった。
家族が絆を深め合う話で、すごく幸せな家族だった。

私とは違って。

でも、どんな家族にも絆はある、それだけで幸せであると書いてあった。
私はお母さんとお兄ちゃんは大好きだ。
だから絆はある、固い固い絆が。

でも、お父さんはどうだろうか。
正直私はお父さんは嫌いだ、大嫌いだ。
だから、やっぱり幸せな家族ではなかったんだと思う。
欠陥家族だったんだ。

でも、この本のお父さんのように、この本の娘が家出した時のように、私のお父さんも心配しているかもしれない。
そう考えるとひどく心が痛み嗚咽した。
私はベッドに横になった。

やっぱり、私は完全にお父さんのことを嫌いになっていないみたいだ。
大嫌いといいつつ、心身の奥深いところで繋がっているようだ。
それが絆なのかな。

でも、今はみんなバラバラだ。唯一お兄ちゃんとお母さんが一緒にいるだけで。



会いたい。



この本のような家族になりたい。いや、戻りたい。
私がものすごぐ小さかった時は幸せだったんだ。
うっすらと頭にその時の記憶が甘く残っている。



涙と嗚咽が止まらずに入り交じってひどい音が鳴っていた。



コンコン、とドアがノックされた。
多分、きどうさんだ。
私は慌ててパジャマの袖で涙を拭った。


「入るぞ」
「は、はい」


声が完全に震えていた。
絶対顔も赤くなっていると思う。涙も拭いきれずにまた溢れてきた。私は布団を顔まで引っ張ってこの泣きっ面を隠した。不自然だけれど最終手段だ。きどうさんには余計な心配をかけたくないから。


「………、もう眠いのか?」
「は、い」
「じゃあ、おやすみ」
「お、おやすみ、なさい」


ガチャリ、きどうさんは出ていった。泣いてるの、バレなかっただろうか。

ああ、パジャマの袖と枕がびしょ濡れだ。
きどうさん、ごめんなさい。








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