昼食後はきどうさんの部屋でまたテレビを見ていた。ソファーにきどうさんの隣に座っている。きどうさんがいればこの番組がつまらなくとも、とても有意義に思えた。実際それほど面白くないけど、不思議と全く苦痛にはならないのだ。
なんとなくきどうさんの方にチラリと目を向けてみたら、ちょうどきどうさんもこっちを向いていて、多分目が合ってしまった。私は慌てて視線を床へと急降下させた。


「そんなに目を反らさなくたっていいだろう」
「す、すいません」


それからきどうさんは溜め息を一つ落とした。
私に聞こえないように小さくしたつもりなんだろうけれど、あいにく耳に届いてしまった。
きどうさんは私に呆れているんだろうか。
私だって、きどうさんともっとうまく話したい。
だけど、なにかが邪魔をするんだ。
私も透明な溜め息を一つ吐いた。



時間が過ぎるのは、意外と早いもので時計は七時を回り、あっという間に夕食の時間。夕食もおいしくてまた涙が出そうだったが、二度もきどうさんに怒られまいと目頭を一生懸命押さえた。



夕食を食べ終えてからは、自分の部屋できどうさんから素敵な本を借りて読んでいた。きどうさんが読んだ本を私も読めるのがとても嬉しかった。それに生まれて初めてのふかふかなベッドに感激していた。座っているだけでこれだから、寝る時がとても楽しみだった。
本を読み進めていると、ドアをノックする音が聞こえた。そして「入っていいか」という鬼道さんの声がしたから私は本を枕元に置いて急いでドアを開けた。


「なんですか?きどうさん」
「風呂入ってこい」
「え!きどうさんがまだじゃないですか、私は一番最後でいいですよ」
「俺が入ってこいって言ってるんだからいいだろう」
「居候の分際で…、いいんですか?」
「あぁ」
「ありがとうございます」


私はきどうさんの言葉に甘える事にして頭を下げた。きどうさんは本当に優しいなあ。
それにしても、きどうさんが悲しそうに表情を歪めていたのはなんでなんだろう。私の心もちくりと傷んだ。


「それでは、こちらに」


私は女中さんに連れられてお風呂に行った。



またお風呂も規格外といいたくなるほどに大きかった。シャンプーとかも見たこともないブランドのもので使うのに気が引けたが、一通りお風呂でやることをして湯船に浸かった。全身の力が抜けて、また新しい力がみなぎる。
ふときどうさんの顔を思い出す。
きどうさんはお風呂に入る時、ゴーグル外すのかなあ。きどうさんはどんな顔でどんな目をしてるんだろう。

お風呂から出るとパジャマと下着が用意されていた。いつのまに採寸したのか、ぴったりだった。私はそれを着てきどうさんの部屋に向かった。

私はきどうさんにお風呂に入った事を伝えると、「俺も入ってくる」と言って部屋を出ていった。

私は自分の部屋に戻って、本の続きを読む事にした。








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