「鬼道」

「なんだ」

名字はいつもと違う雰囲気でしおらしくもじもじしている。いつもこうしていれば可愛いのにもったいないものだ。

「あのね、さっき、春奈ちゃんのパンツ見ちゃった」

「は……?」

前言撤回。発言が変態すぎて可愛くなんてない。それより春奈の安否が心配だ。

「春奈に何をした……!」

「なんにもしてないよ、ただみんなでサッカーしてたら見えちゃっただけ」

「なっ…、まさか男も居たんじゃないだろうな」

「豪炎寺とか風丸とか円堂とか木暮くんとか立向居くんとか」

「もういい、聞きたくない」

「でも大丈夫だよ!多分見たのは私だけだから!」

「根拠はなんだ?」

「ずっとしゃがんでたから」

「春奈に今度からサッカーはジャージで参加するように言っておく」

こんな変態をちょっとでも可愛いと思ってしまった自分が憎かった。

「じゃあな」

「待ってよ!鬼道!」

「まだ何かあるのか」

「なんで私がしゃがんでたかわかる?」

「見るためだろう」

パンツ、とは口に出せなかった。

「違う、鬼道がいなかったからつまんなかったの!」

そう言うなり名字が俺に抱き付いてきた。流石に驚いた。

「ど、どうした」

「鬼道、好き……」

前言撤回。俺はこいつが果てしなくいとおしいと思った。俺も名字を抱き締める。

「俺もだ」

「鬼道……」

「なんだ」

「春奈ちゃんのパンツを鮮明な描写で伝えるから、鬼道のパンツ見せて」

前言撤回。否、やっぱり、しない。こんなに変態でも可愛いものは可愛い、好きなものは好きだ。

「後でな」

「やったー!」

決して俺は変態じゃない。断じて俺は変態じゃない。だって、恋人の求める事には応えないといけないだろう?



(20100921)









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