私には付き合って1週間くらいの彼氏がいます。その人は飛鷹征矢くんといって背が高くてとてもかっこいい人です。そして喧嘩が強いらしく不良の頂点に君臨しているらしいのです。リーゼントだからでしょうか。
でも、私を体育館の裏に呼び出して一言「好きだ」とだけ言った飛鷹くんの瞳はとてもまっすぐで私にはとてもそんなヤンキーの親玉とは思えなかったのです。
これは少し悲しい事なのですが、多分まだまだ私は飛鷹くんについて知らない事がたくさんあるんだと思いました。

そして今、私はその飛鷹くんと並んで一緒に下校しています。初めて、です。少し緊張しています。
大通りに出て、進んで道路側に行った飛鷹くんに私はときめきを感じられずにはいられませんでした。こんな体験、漫画の中だけだと思っていました。
特に話す事も無く私達は帰り道を歩いています。空気が重苦しく感じられました。
Tの字に曲がる曲がり角に差し掛かった時、私は右に、飛鷹くんは左に曲がろうとしました。私は「あ」という声が出てしまって恥ずかしくなりました。

「名字はそっちか」

「はい、もうばいばいですね」

私はもう飛鷹くんと別れなくちゃいけないのか、と寂しくなっていると、飛鷹くんは驚く事を口にしました。

「いや、家まで送る」

「え、でも、悪いですよ」

私はばいばい用だった手を胸元で左右に強く振りました。すると飛鷹くんがその手を掴んで私の家の方へ歩いていきました。私はびっくりしつつ飛鷹くんに付いていきました。飛鷹くんの手は大きくてゴツゴツした男の子らしい手でした。
あ、飛鷹くんが手の握り方を変えました。これは、恋人繋ぎと言われる物だと思います。私はただ、手を繋いでいるだけでもうどきどきしていたのに、飛鷹くんがそんな事をしたからもっとどきどきしてしまいました。
私は斜め上の飛鷹くんの顔を見ました。私と飛鷹くんには結構身長に差があるので見上げないといけないのです。私は飛鷹くんの耳が赤くなっている事に気付きました。それに手が少し汗ばんでいます。私はちょっと笑ってしまいました。

「な、なんだよ」

「飛鷹くんも緊張するんですね」

「う、うるせえ」

そしてそっぽを向いて「試合前よりも緊張してるわ」と言った飛鷹くんが可愛かったです。
私はぎゅっと手を握り返しました。

また特に話す事も無く、歩いていくのですが不思議とさっきのような気まずい空気はありませんでした。代わりにあるのは、心地よい安心感です。私と飛鷹くんが繋がっているからでしょうか。

そんな幸せな時間が過ぎてしまい、もう私の家の前。楽しい時間は短く感じる、とはよく言った物だな、と実感しました。

「送ってくれてありがとうございました」

「当たり前の事だ、じゃあな名字」

「ばいばい、飛鷹くん」

私は飛鷹くんの背中が見えなくなるまでそれを見届けました。そうしながら私は考えます。

今日わかった事は、飛鷹くんが私が思っていた以上に優しいという事と、意外と緊張しいで可愛いという事。

今度それを言ってみようかなと思います。多分、高確率で怒られるだろうと予想します。



やっぱり、私にはそんな飛鷹くんが不良の頂点なんて思えないのでした。



(20101017)









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